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2023.01.07 08:38

俳句で向き合う戦争と平和 ウクライナ女性、句集刊行へ

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 ウラジスラバ・シモノバさん

 ロシアからの軍事侵攻が続くウクライナで、俳句を詠むウクライナ人女性がいる。東部ハリコフ出身のウラジスラバ・シモノバさん(23)は日常が戦争にのみ込まれ、見慣れた景色が色を失っていくさまを鮮烈に表現。その作品群に胸を打たれた俳人黛まどかさん(60)は、平和を祈る句を詠んで応答し、翻訳句集を日本で刊行する計画も進めている。


 〈地下壕の紙飛行機や子らの春〉


 〈水甕の底に触れたる寒さかな〉


 英語など外国語の俳句は、季語や押韻は必須ではなく、三行詩で表現する。ウラジスラバさんがロシア語で詠み、英訳した句を、日本語に直訳し、さらに黛さんら俳人が「五七五」に置き直した。


 14歳の頃から俳句を詠み始めたウラジスラバさんは、ロシア語訳で松尾芭蕉や与謝蕪村らの句にも親しんだ。昨年2月、ハリコフが空爆を受けると、家族と共に3カ月間シェルターに避難。メール取材に「句を作るのは日記を書くようなもの。書き留めておけば、後々、世界中の人が私の経験を共有することができる」と思いを語る。


 シェルターの中で紙飛行機を飛ばし遊ぶ子どもたち、ためた水が底を突いたことを知る瞬間…。「こんなテーマで詠むなんて戦前は想像もしなかった。けれど自分の感情を形にできるので、気持ちが楽になります」


 黛さんは侵攻が始まった翌月、「言葉が集まれば何かを動かせるのでは」との思いから、平和を祈る俳句を募集するプロジェクト「Haiku for Peace」を開始。40カ国から計約800句が集まった。自身も、日本とロシアを行き来する渡り鳥に祈りを託した句を発表した。


 〈白鳥の帰りゆく地を思ひをり〉


 そんな時、ウラジスラバさんの活動を伝える新聞記事を読んだ。「日常の景色を通して、それまで当たり前にあったものが奪われる切なさを表現する姿に、俳句の本質を見た気がしました」と黛さん。メールで交流が始まり、届いた俳句をホームページで紹介した。


 昨年10月には、客員教授を務める昭和女子大(東京)で、日米の学生が「平和」をテーマにした自作の俳句を持ち寄る句会を実施。句は学生自身で英訳し、ウラジスラバさんの元へ届けた。句を読んだウラジスラバさんは「温かい言葉と願いが書かれており、感動した」と語った。

(c)KYODONEWS

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