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2022.12.31 08:00

【生物多様性会議】目標達成へ実効性高めよ

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 地球の長い歴史の中で培われた豊かな生態系が危機にひんし、今も100万種を超える生物に絶滅の恐れがある。対策の強化が急がれる。
 カナダで開かれていた国連の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)が、2030年までの新たな国際目標を採択した。生態系の維持から回復へ、国際社会で具体的な行動を積み重ねる必要がある。
 COP15は20年に中国で開催される予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期を余儀なくされた。このため10年のCOP10で採択された「愛知目標」が期限切れとなり、目指すべき指標のない空白期間が生じていた。後継となる新目標で実効性を上げ、取り組みの遅れを取り戻したい。
 新目標は23の個別項目で構成される。注目された保全域の設定では、愛知目標の「陸域の17%、海域の10%」から陸海とも30%へと大幅に拡大した。外来種の侵入速度や農薬などの汚染物質による危険性除去、プラスチック汚染の削減などでも具体的な数値目標を設けた。
 それらの対策を裏付ける資金支援では、官民で2千億ドル(約27兆円)を確保し、途上国へ25年までに年200億ドル、30年までに年300億ドルを投じるとした。
 支援の拡大を強く求める発展途上国と、拠出額を抑えたい先進国の対立が浮き彫りとなって交渉は難航していたが、先進国側が歩み寄る形で合意に達した。企業活動が生態系に与える影響に関し、情報開示を促す目標も盛り込んだ。
 加盟各国、自治体、企業と幅広い当事者に多様な対策を求める内容で合意したことは大きな成果といえよう。ただ、愛知目標で掲げた20項目の多くは達成できなかった。
 目標は定めたものの、対策の進み具合を評価する仕組みを欠いたことが原因というほかない。新目標に向けた取り組みにも法的強制力がない。どう実効性を担保するかが目標達成の鍵を握る。
 COP15では、各国が国内対策の計画を策定し、取り組み状況を今後のCOPに報告、評価することで合意した。気候変動対策のパリ協定にも似た枠組みがある。世界規模の取り組みだけに各国で対策の濃淡が出やすいが、この仕組みを活用して対策の底上げ、強化を図りたい。
 生物多様性の保全と地球温暖化対策は密接に絡み合った課題で、「双子の危機」とも言われる。一体的な取り組みが重要になるが、新型コロナの流行やロシアのウクライナ侵攻などにより、国際社会の認識が後退したと指摘する専門家もいる。
 だが、生息域の破壊や乱獲、気候変動などはいずれも人間が引き起こしている。国連の科学者組織は種の絶滅が過去1千万年の平均と比べて、数十~数百倍に加速していると分析する。
 対策が遅れるほど自然のダメージは大きくなり、人間の生活にも大きな影響を及ぼす。地球環境に対する国際社会の機運を着実に高めなければならない。

高知のニュース 社説

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