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2022.12.30 08:00

【2022回顧(下)】物価高が暮らしを圧迫

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 ウクライナの街が破壊され、多くの市民の命が奪われた。ロシアの侵攻が国際秩序をゆるがせ、混乱が社会に重くのしかかる1年だった。
 国際社会はロシアに強い非難を向けた。しかし、エネルギー関連施設の攻撃は続き、電力不足で人々は恐怖と極寒の中での生活を強いられている。徹底抗戦にロシア軍戦力の低下の見方がある一方、新たな攻撃を仕掛けるとの分析もある。改めて攻撃の停止と撤退を求める。
 侵攻は世界経済にも大きな影響を与えた。新型コロナウイルス感染による景気減速から立ち直る中でエネルギー資源や穀物の国際相場は上昇し、さらに拍車をかけた。物流コストは増大し、制裁や報復による混乱も大きかった。
 輸入原材料の価格が上昇し、日本でも生活用品の値上げが相次いだ。ガソリン価格や電気代も上がり、家計を圧迫した。負担感の軽減へ賃上げへの関心が高まった。企業は仕入れ価格の上昇が重荷となった。
 大幅な円安も、国内の物価を押し上げた一因だ。米欧はインフレ抑制へ金利引き上げへと向かった。日銀は金利を極めて低い水準に抑え込む大規模な金融緩和を続けた。
 その姿勢に疑問や批判が向けられる中、日銀は緩和策を修正し、事実上の利上げに踏み切った。異例の政策の継続がもたらした副作用は重い。後任総裁人事をにらみながら、正常化へ難しいかじ取りが続く。
 新型コロナ流行は3年目となり、社会経済活動と感染拡大防止の両立を模索する動きが強まった。3月にまん延防止等重点措置が解除されてからは、感染が拡大しても行動制限は課されていない。
 政府の全国旅行支援や入国者の水際対策緩和を追い風に、宿泊や飲食などの業績が上向く。しかし、感染の再拡大や仕入れ価格上昇への不安感は根強い。この冬はインフルエンザとの同時流行が警戒される。まだ慎重さをぬぐえない段階だ。
 ウクライナ侵攻は中国や北朝鮮の動向と相まって、日本の安全保障の在り方にも意識を向けさせた。岸田政権は防衛費の増額を打ち出し、増税に踏み込む構えを見せる。
 財源確保は社会保障費や子ども関連予算にも関係するが、後回しの印象だ。説明も議論も足りてはいない。唐突で拙速な対応では暮らしをむしばみかねない。
 侵攻や物価高騰で重苦しさが漂う中、スポーツは明るい話題を提供した。サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会では、日本代表は目標とした8強以上の「新しい景色」は望めなかったが、強豪国を退ける躍進に興奮と感動が広がった。優勝したアルゼンチンをはじめ、各国選手の美技が世界を魅了した。
 他方、東京五輪・パラリンピックを巡る「不正」は、汚職から談合事件へと広がった。経費の総額も判然としない。これでは今後の国際的な大規模イベント招致へも厳しい視線が向けられかねない。徹底究明とともに、組織運営の在り方の検証は越年の課題となる。

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