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2022.12.18 08:40

ナベヅルの越冬定着を 四万十つるの里づくりの会(四万十市)

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ナベヅルの保護や調査に励む「四万十つるの里づくりの会」のメンバー(四万十市江ノ村)

ナベヅルの保護や調査に励む「四万十つるの里づくりの会」のメンバー(四万十市江ノ村)

 グレーの体に白い首が特徴の渡り鳥、ナベヅル。毎年10月下旬ごろ、シベリア東南部などから高知県西部、四万十市の田んぼや川に飛んでくる。そんな冬の使者を保護、調査し、地域活性化にもつなげようと活動しているのが「四万十つるの里づくりの会」だ。

 ナベヅルが主に越冬するのは鹿児島県。約1万羽が羽休めに集まるといい、鳥同士の伝染病拡大を防ぐ上で越冬地の分散が課題とされている。2001年から検討を始めた国は、過去に越冬した記録がある同市を新たな越冬候補地に選定。これを受け06年、住民らの会が発足した。

 25人の会員は10月下旬から3月上旬ごろまで毎日市内を巡回し、ナベヅルの発見場所や数などを地道に記録。餌場の確保にも努め、イベントや子ども向け学習会なども開いて啓発にも励んできた。

 そんな努力が実ったのか、2015年には1日に239羽と過去最多のナベヅルが飛来。16年までの26年間で数回しか見られなかった越冬も、17~19年は連続して確認された。

 長年の調査で、生態も徐々につかめてきた。日中は中筋川の流域など二番穂がある田んぼを餌場として過ごし、メンバーの平石英正さん(72)は「餌をついばむ姿がかわいらしい」とほほ笑む。夜の主なねぐらは四万十川だ。

 ただ、四万十川は12月に入ると落ちアユ漁が始まり、川に出入りする人が一気に増える。警戒心が強いナベヅルは人影に驚き、この地を離れてしまう例もあった。

 「しっかりしたねぐらがあれば、もっと越冬する可能性はある」。そう考えた同会の会長、佐伯達雄さん(72)らメンバーは地元の農家へ協力を要請し、今年から過去にナベヅルが降り立った記録がある市内の田んぼ3カ所に水を張り始めた。四万十川の代わりに、水田をねぐらとして使ってもらおうとの試みだ。

 越冬地にはナベヅルを観光資源と位置づけ、冬に県外客を呼び込んでいる地域もあるという。佐伯さんは今後もナベヅルが過ごしやすい環境整備を進め、「ゆくゆくは地域の産業振興にもつなげたい」と夢を描く。

 ツルが舞い、人もにぎわう里山に―。そんな四万十市を目指し、メンバーの試行錯誤は続く。(幡多支社・河本真澄)

【メモ】
 中筋川は、宿毛市の源流点から四万十市へと流れ、四万十川に合流する1級河川。四万十つるの里づくりの会は毎年11月、パネル展示や観察バスツアーなどを通じてナベヅルへの理解を深めるイベント「四万十つるの里祭り」を開いている。問い合わせは同会事務局(0880・34・4333)へ。

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