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2022.12.13 08:40

コロナ禍と物価高、障害者働く場にも打撃 高知県内事業所「財政基盤弱い。公的支援を」

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軍手製造を手掛ける事業所。原材料費の値上げが直撃している(高知市神田のあおぞら蒼空舎)

軍手製造を手掛ける事業所。原材料費の値上げが直撃している(高知市神田のあおぞら蒼空舎)

 新型コロナウイルス禍や物価高騰が、障害者が働く高知県内の就労継続支援B型事業所にも打撃を与えている。感染対策で食品販売などの一部活動ができなくなったほか、送迎車のガソリン代や、生産活動の原材料費などの経費が増加。県内の約20事業所でつくる「きょうされん高知支部」の山田隆支部長は「財政基盤が弱いところも多く、影響が大きい。公的な支援をしてほしい」と訴えている。

 福祉事業所グループ「あおぞら蒼空舎(そうくうしゃ)」は高知市内4カ所に事業所を構え、知的障害がある人ら約90人が働く。事業の柱の一つは軍手製造だが、原材料の糸が今年3回値上がりし、「過去にないこと」と悲鳴を上げる。

 中越啓介事務長は「これまで糸の値段は2、3年に1度値上げがあるかどうかで安定していた。もともと収支トントンで良しとしていた事業だが赤字の状態」と話す。

 編み機で1点ずつ丁寧に仕上げており、園芸用などの一般客から鉄工所作業員まで愛用者も多い。膨らむ経費は事業所の努力で補塡(ほてん)してきたが、「このままでは自分で自分の首を絞めかねない」と販売価格の見直しを検討している。

 電気代、ガソリン代などの値上げラッシュも直撃している。

 同市のNPO法人「あさひ会」が運営する4事業所では、2020年に9万円前後だった月々の水道光熱費が今夏20万円程度に倍増。ガソリン代も1カ月14万円前後から20万円超に膨らんだ。

 手作りクッキーの出店販売を行っていたが、コロナ禍で販売機会が激減。利用者にも感染者が複数出て、出席率に応じて国から事業所に支払われる報酬も減るなどダメージが重なった。銀行から借り入れを行って乗り切っているという。

 「すずめ共同作業所」(同市丸池町)では、人事異動の時期に大量注文を受けていた名刺印刷や、ランチを提供している喫茶店の業務にコロナ禍の影響が長引く。本年度の生産活動収入は19年度に比べて月々30~50%程度減り、斎藤一夫所長は「競合が多く、請け負う業務の値段は上げられない。物価高がじわじわと追い打ちをかけている」と話す。

 運営に苦しむ福祉施設に、県と高知市は9月議会で国の臨時交付金を活用した給付金支給を決定。B型事業所には10万円が支給されているが、「赤字が大きく、いっぺんに吹き飛んでしまう」と不足を訴える声も聞かれる。

 現在、きょうされんの全国組織がコロナ禍や物価高に対する支援を国に求めるキャンペーンを行っており、高知支部も署名活動に取り組んでいる。山田支部長は「障害者施設が手掛ける商品の購入なども力になる。広く協力していただけたら」と話している。(松田さやか)

 就労継続支援B型事業所 一般企業への就職が難しい障害者らに、就労や生産活動の機会を提供する施設。就労に必要な知識や能力の向上のための訓練、支援を行う。利用者と雇用契約は結ばず、対価として工賃を支払う。県内に107事業所あり、利用者は約2300人。部品組み立てや農作業、菓子製造販売、食品加工、清掃、クリーニングなどの仕事を担っている。

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