2022.11.28 08:00
【武器輸出検討】戦禍拡大に関与するのか
だが、条件の表現があいまいで際限なく拡大することへの歯止めになるかははなはだ疑問だ。日本の技術が人命を奪い、紛争の被害を拡大させる恐れが拭えない。平和国家としての理念が問われている。
日本は戦後、長年にわたって武器や関連技術の輸出を原則禁じた「武器輸出三原則」を国是としてきた。安倍政権は2014年4月、この禁輸政策を撤廃。国際協力や日本の安全保障に資する場合に、相手国の適正な管理などを条件に輸出を認める現行の三原則へと見直した。
運用指針では事実上、国際共同開発・生産では武器の供与が認められているが、装備品の輸出実績は乏しい。国内の防衛産業は自衛隊しか顧客がなく、収益率が低いとされる。このため、政府や与党内には防衛産業維持への懸念がある。
こうした背景に、ロシアによるウクライナ侵攻が重なる。ウクライナに防弾チョッキを提供した際、当時の運用指針では困難だったため、供与可能な項目を追加して提供した。この対応を踏まえ、政権内で三原則そのものの見直し論が高まったという。
今回の見直しでは、他国からの侵略や武力による威嚇などを受ける国に対し、殺傷能力のある武器の輸出を解禁する。さらに、殺傷能力のない装備についても輸出できる対象を広げる方針だ。
ロシアのウクライナ侵攻などで国際的な緊張感が高まるなか、多国間の連携強化が重要なテーマになっているのは確かだろう。中国の海洋進出や、北朝鮮による核開発・ミサイル発射などで、日本周辺の安全保障環境も厳しさが増しているのは間違いない。
しかし、こうした状況は、武器の輸出拡大や防衛産業維持とは別の問題といわざるを得ない。三原則見直しも拙速に過ぎよう。
そもそも、防衛装備品の輸出路線に方針を転じた現行の三原則から、国民の理解を得ているとはいいがたい。武器禁輸は「平和主義」の根幹をなす原則だったにもかかわらず、安倍政権は国民の代表である国会に諮ることなく、「閣議決定」で禁輸の原則を廃した。さらに輸出の拡大を図る見直しとなれば、再び国民の意向を軽視することにつながる。
武器輸出のたがは緩む一方だが、この間も「平和主義」を掲げた憲法の規定は一言一句変わっていないことを認識しなければならない。
殺傷能力のある武器を紛争地に提供すれば、間接的ではあっても戦禍を拡大させることに関与した形になる。平和主義の理念とどう整合性を取るというのか。国民の合意、理解なくして、国の在り方をゆがめることは許されない。