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2022.11.25 08:40

高知競馬の西川騎手引退 35年で3296勝、調教師に転身

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カコイサンデーに騎乗し、県知事賞3連覇を果たした西川敏弘さん(2003年12月)

カコイサンデーに騎乗し、県知事賞3連覇を果たした西川敏弘さん(2003年12月)


「売り上げが伸びて本当に良かった。これを守っていきたい」と話す西川さん(高知競馬場)

「売り上げが伸びて本当に良かった。これを守っていきたい」と話す西川さん(高知競馬場)

 高知競馬のトップ騎手として30年以上活躍した西川敏弘さん(52)が今月末でむちを置き、調教師としての一歩を踏み出す。廃止の危機から一転、全国屈指の売り上げへと育った激動の高知競馬とともに駆け抜けた騎手人生。「苦しい時も皆が向上心を抱き続けて今がある。これからもより良い高知競馬を目指す」と決意を新たにしている。

 高岡郡越知町出身。騎手へのきっかけは中学校の先生からの勧めから。町内にあった調教場に「ほかに目標もないし」と休日ごと足を運んだ。卒業後、競馬学校を経て1987年4月に17歳で騎手デビュー。たちまちトップジョッキー入りを果たした。

 当時、競馬場には活気があった。「正月は駐車場に車を置けないほどの観客が来た」と懐かしむ。

 ◇ 

 しかしその後、地方競馬は経営が悪化。高知競馬にも公費投入が続き、2002年には「単年度赤字なら即廃止」という、絶体絶命の条件が下された。

 賞金は全国最低。一番下のクラスでは5着に入っても騎手の手当は缶ジュース代ほど。生活のため高知を離れる仲間が相次いだ。

 「どこに行っても『高知はいつつぶれる?』という雰囲気。寂しくて、悔しくて。『競馬ができなくなるかも?』という危機感を抱いてレースを続けていた」

 自分は高知が好き。離れたくなかった。「どうすれば馬券が売れる」「みんなを守れる」と、関係者一丸となってアイデアを出してファンを増やしてきた。

 転機は09年。「最後の一手」と導入したナイターだった。全国的に広がっていたインターネット投票の追い風も受け、売り上げはV字回復。08年度に38億円まで落ちていた売り上げは、最高額を毎年更新し、21年度は949億円に達した。

 西川さんも勝ち星を積み重ねる。10年12月に高知で歴代最多(当時)の2243勝目を挙げ、35年間で通算3296勝を記録。01~03年に県知事賞を3連覇するなど、「高知で取りたいレースはほとんど取った」と笑う。

 ◇ 

 調教師を考え始めたのは今年に入ってから。所属先の大関吉明調教師が亡くなり、周囲から後継に推されたという。さらに6月、3カ月間騎乗できないほどの大けがを負った。

 「迷いもあったけど、けがをして、神様が『もう乗るな』って言いゆうのかなという感覚になった」

 けがで離れた期間に猛勉強し、調教師試験に合格。11月上旬にも肋骨(ろっこつ)などを折ったため引退レースは開かれないが、27日に引退式が行われる。

 来年1月の調教師開業に向けて準備を進める西川さんは「騎手時代、自分が必死で調教して馬が応えてくれた経験を生かす。高知競馬のレベルが上がれば、お客さんが面白がってくれる。それが今の高知競馬を保つことにもつながる」。目標は中央競馬で勝負できる強い馬を育てること。レースはまだ終わらない。(大山泰志)

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