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2022.11.26 08:30

「高山植物への深い関心」 シン・マキノ伝【39】=第3部= 田中純子(牧野記念庭園学芸員)

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五百城文哉筆「アオキランの図]」(高知県立牧野植物園所蔵)

五百城文哉筆「アオキランの図]」(高知県立牧野植物園所蔵)

 牧野は高山植物にどのような興味を持ったのであろうか。「農事新報」(第12巻第10号、1918年)に掲載された「高山植物に就いて」という記事を見てみよう。そこではまず名称の概念から説明する。高山植物というのは高山にのみ生育するから名付けたと考えると誤りで、平地にも海岸にも見られる。寒帯では平地に生じるので、寒地植物という方が適切かもしれない。温帯にあれば高山に見いだすのでこのように称したものであろうから、明確に表すには「高山型植物」とか「高山式植物」と呼びたい。こう述べる。

 高山植物研究のどこに興味が持たれるのかというと、高地では下界と異なって気象条件が厳しいことや広い地面がないことなど種々の条件があって、平地の研究よりも難しいところに研究の価値があるという。すなわち「親密且つ普通なる下界のそれと、近づき易からざる雲表のそれとは此の如く其研究に難易があるが、然(しか)し亦(また)、それが頗(すこぶ)る面白いのである」と述べる。さらに高山植物が生える土壌の状態を述べ、こうした環境にある高山植物がどのような特徴を持っているかを、植物の例を挙げて解説する内容となっている。

 また、高山植物についての注意として近年、これらの植物がもてはやされ採られることが多くなったため、…

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