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2022.11.23 08:30

魅惑的な牧野の写真は誰が写したのか? シン・マキノ伝【36】=第3部= 田中純子(牧野記念庭園学芸員)

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38歳のころ。東京帝国大学理科大学にて(明治33(1900)年)

38歳のころ。東京帝国大学理科大学にて(明治33(1900)年)


 「大日本植物志」に収載される唯一の写真については詳しく触れなかったが、それは同第2集(1902年刊)第6図版のサクユリである。図に「K. Ogawa, phot.et imp.」と明記され、これは小川一真(おがわ・かずまさ、1860~1929年)*のことである。前回の「新撰日本植物図説:顕花及羊歯類部」にも1点だけ写真が掲載される。それは、第1巻第10集(1901年刊)第46図版のイワヤシダである。こちらも小川による**。さらに、牧野富太郎撰「日本禾本莎草(かほんしゃそう)植物図譜」および「日本羊歯(しだ)植物図譜」(『牧野植物学全集 植物分類研究上』誠文堂新光社 1935年に再録)は「図譜」と称するが、個々の植物の写真を印刷したものからなり、小川が撮影および印刷の担当であった。

 「日本禾本莎草植物図譜」は、明治34(1901)年2月から同36年8月にかけて第1巻として第1集から第10集まで分冊の形で出版された。各集に4図版で総計40図版になるが、メダケ、ハチク、マダケ、モウソウチクは複数の写真が載る。禾本はイネ科、莎草はカヤツリグサ科である。「日本羊歯植物図譜」は、明治34年5月から同36年9月にかけて第1巻として第1集から7集まで分冊の形で出版された。各集に4図版が収められ総計28図版である。クジャクシダ・イワガネシダ・イワガネゼンマイ・リュウビンタイは2点ずつの写真が載る。シダ植物の図を多く収載する「新撰日本植物図説」と「日本羊歯植物図譜」の両方に載るものはハコネソウのみである。出版年がほぼ同時期である「日本禾本莎草植物図譜」と「日本羊歯植物図譜」は、冊子の体裁も同じであるが、表紙のタイトルの字体が異なる。

 小川が撮影した写真はどれも、植物の全姿がくっきりと浮かび上がり鮮明である。被写体である標本は牧野が作製したもので、きれいにできていることも写真の仕上がりを良いものにしているのであろう。しかしながら、牧野の描画した図の方が、植物の全形図に加えて各器官のつくりを図示する部分図(解剖図)が多数並べられ、より詳細に植物の特徴を捉えることができよう。このことは、「日本禾本莎草植物図譜」の序でも、まずは所属や名称および全形を示すことを第一として、解説文と花部の解剖図などは別に一書を編纂したいと述べていることからも頷ける。

 さて、東京帝国大学理科大学植物学教室の助手室に立つ牧野の写真をここに掲げる。この写真は、…

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