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2022.11.24 00:04

【K+】vol.191(2022年11月24日発行)

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K+ vol.191 
2022年11月24日(木) 発行

CONTENTS
・はじまりエッセイ letter193 中西なちお
・特集 お茶のふるさと|大抜茶・香美市物部町/池川茶・仁淀川町池川地区
・フランス生まれの土佐人便り BONCOIN IN PARIS✉38
・高知を元気に! うまいもの熱伝 volume.65|春菊@香南市
・K+インタビュー 話をしてもいいですか vol.193 嶋﨑史香
・+BOOK REVIEW
・なにげない高知の日常 高知百景
・日々、雑感 ある日 vol.24
・気の向くままに お気軽 山歩き ;39
・小島喜和 心ふるえる土佐の日々 第三十八回
・Information
・シンディー・ポーの迷宮星占術
・今月のプレゼント

河上展儀=表紙写真

特集
お茶のふるさと
大抜茶・香美市物部町/
池川茶・仁淀川町池川地区


いとうまいこ=取材 河上展儀=写真


山あいの傾斜地で育まれる土佐茶。
ふるさとの味を受け継ぐ、2つの地域の物語。 


左/心を一つにお茶作り。農家たちが生み出す力強い池川一番茶 右/緑深い物部川上流域。この地で静かに継がれてきた茶の歴史

左/心を一つにお茶作り。農家たちが生み出す力強い池川一番茶 右/緑深い物部川上流域。この地で静かに継がれてきた茶の歴史



歴史ある土佐のお茶

 高知県は知る人ぞ知るお茶の産地です。仁淀川や四万十川、物部川といった清流の上流域には古くから「ヤマチャ」と呼ばれる在来種が自生。歴史史料「南路志」によると、江戸時代後期には中国・九州地方まで運ばれていたといい、「土佐茶を不用所なし。誠無量の名産也」とあるように、お茶は土佐を代表する産物だったのです。
 その後、茶の生産はますます盛んになります。畑が広がる山あいの急傾斜地は水はけが良く、昼夜の寒暖差により発生する霧は、苦みの少ない良質な葉を育みます。また葉の持ち味を生かした加工法により、高知のお茶は入れると金色透明に。その豊かな香りとうまみは全国的にも高く評価され、ブレンド用として静岡などに出荷されてきました。
 転機が訪れたのは今から15年ほど前。原産地表示が厳格化され、県外への出荷が減少します。さらにペットボトル飲料の普及により茶葉消費が減って、市場価格が低迷。農家の高齢化も進み栽培面積は大幅に減り、産地としての維持が困難になりました。
 そこで県と茶業関係者は、県産茶葉100%で作った「土佐茶」のブランド化に取り組みます。また、農家もそれぞれが一念発起。今では多くの人々の行動が実を結び、仁淀川町、津野町、佐川町、四万十町など県内各地の多様な土佐茶が知られるようになりました。今回訪問したのは、香美市物部町と仁淀川町池川地区。迎えてくれたのは急斜面に広がる美しい茶畑と、ふるさとの産業を守りたいと奮闘する地域の人々です。


幻の銘茶、復活への道
大抜茶
香美市物部町

物部大抜茶 復活の会の皆さん。「風味豊かな大抜茶を食卓にどうぞ」

物部大抜茶 復活の会の皆さん。「風味豊かな大抜茶を食卓にどうぞ」


地域産業の継承を

 高知市中心部から車でおよそ1時間。物部川上流域の山村で、大抜茶は作られています。江戸時代には土佐三大銘茶の一つとされ藩主にも献上されていましたが、いつの頃からかその存在は忘れ去られます。この幻の銘茶を復活させようと立ち上がったのが、県などが取り組む「土佐茶プロジェクト」のメンバーだった土佐山田町出身の長瀬和夫さんです。
 同プロジェクトで初めて大抜茶の存在を知った長瀬さんは、地域を訪ね歩き、さまざまな文献に当たり、大抜茶の調査に尽力します。「確かに昔から物部のお茶はおいしいといわれてきた。絶対に廃らさんぞ」。地元に根差した産業の復活と継承を決意し、数軒の農家と小売業者らで「物部大抜茶復活の会」を発足。令和2(2020)年5月、待望の商品化にこぎ着けました。
 「今年で3年目です。ぜひ味わってほしいし、まずは存在を知ってほしい」。復活したお茶には、ふるさとへの熱い思いが込められています。






かつて栽培されていた茶の木。野生化した姿が茶産業の歴史を物語る

かつて栽培されていた茶の木。野生化した姿が茶産業の歴史を物語る



<県内の主な取扱先>
土佐山田ショッピングセンター
「バリューノア店・かがみの店」(香美市土佐山田町)
奥物部ふるさと物産館(香美市物部町)
など

●読者プレゼント
大抜茶(緑茶)1袋を1人にプレゼント。ご応募はプレゼント応募フォームよりどうぞ。


各家に伝わる製法

 現在生産に携わるのは、物部町に点在する7軒の農家です。ほとんどの家が古くから自家消費用にお茶を作っており、各家に伝わる昔ながらの製法が守られています。小浜地区の小松宏木さんもその一人。「作り方はおじいから教えてもろうた。その時の茶の状態や気候で手加減して。そう、手で仕事しています」
 「どれも懐かしい味がするし、風味も最高」という大抜茶。農家さんたちは土佐山田町のスーパー「バリュー」に各自仕上げ茶を持ち寄り検品し、自ら袋詰めします。「袋詰めの時は力が入るね。みんなあうれしいがね」と小松さん。当初農家さんたちは「売れるろうか」と半信半疑だったといいますが、こうして世に出すことができ本当に良かったと長瀬さんは話します。「目標は現状維持ですね。元気で長く作っていくこと」。ふるさとに伝わる産業の維持を目指し、高望みすることなくこつこつと歩みを進める「物部大抜茶復活の会」の皆さんです。





守り継ぐ最高級品質のお茶
池川茶
仁淀川町池川地区

「私たちのお茶でゆっくり和んでください」と話す池川茶業組合の皆さん

「私たちのお茶でゆっくり和んでください」と話す池川茶業組合の皆さん


こだわりの一番茶

 清流仁淀川の支流が流れる、のどかな池川地区。ここで作られるのが池川一番茶、通称池川茶です。古くは藩主に献上された歴史が残るお茶どころであり昭和の時代には相当量が収穫されていましたが、他の地域同様、時代の流れでそれも減少します。しかし作り手の熱意が変わることはありません。一番茶に、そして減農薬にこだわり、池川茶業組合に所属する製茶農家4世帯が上質な茶葉を栽培。その努力が実り、今年の高知県茶品評会審査会では、5年連続となる最優秀賞の知事賞を受賞しました。
 「良い土を作り良い茶葉を作る。そうせんと良いお茶にはならん」。熱心に語るのは、組合理事の山中忠一さんです。組合では春の芽のみを製品に使い、秋刈り込んだ枝葉は肥料にします。「だから池川の茶畑は土がふかふか。今は春きれいな芽を出すための、大事な季節なんですよ」。お茶のことが頭から離れないという山中さんの、茶畑への愛情が伝わってきます。




丁寧に丁寧に作られた池川一番茶。池川茶園のスイーツと一緒にぜひ

丁寧に丁寧に作られた池川一番茶。池川茶園のスイーツと一緒にぜひ



<県内の主な取扱先>
サンシャイン(県内17店舗)
とさのさと(高知市北御座)
てんこす(高知市帯屋町)
日曜市(隔週)
など

●読者プレゼント
池川一番茶(霧の薫)1袋を1人にプレゼント。ご応募はプレゼント応募フォームよりどうぞ。


組合一丸となって

 池川茶業組合は、約30年前に10人で設立されました。組合では最高級品質のお茶のみを販売するため、肥料や施肥時期、摘む時期も統一。摘んだ茶葉は工場に集め検品し、厳選してすぐに加熱します。山中さんは「一人でも悪い葉を持ってきたら質が下がる。そりゃあけんかもしたけんど、良いもんを作っていこうと切磋琢磨(せっさたくま)して、みんなあで協力してやってきました」と話します。
 うまみが凝縮した春の茶葉は、1次加工した状態で冷蔵保存します。そして販売する分をその都度火入れして袋詰め。だから池川一番茶は常に新鮮です。「春の新茶は爽やか、秋は熟成された大人の味。それぞれの良さがあります」そう教えてくれたのは、数年前から事務を担う竹村恵実さんです。「池川一番茶でないといかんというお客さまもいらっしゃるんです。日曜市でも心待ちにされている方がいて」。組合員みんなで作り上げる力強い味わいのお茶が、人々の心も潤しているようです。




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