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2022.11.13 08:00

【米中間選挙】深まる社会の分断を危惧

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 開票作業が続く米中間選挙は、人気が低迷するバイデン大統領の与党民主党が予想を覆して野党共和党との接戦に持ち込んだ。
 中間選挙は、2年前の大統領選で掲げた公約が達成されているのかを有権者が判断する機会となる。現職の所属する政党に厳しい審判が下されることが多く、共和党のシンボルカラーである赤にちなみ、「レッドウエーブ(赤い波)」の躍進が取りざたされた。
 選挙戦の最大の関心はインフレだった。雇用環境は堅調とはいえ、深刻な物価高騰が続く。共和党はバイデン政権の経済政策を強く批判し、大規模な財政支出が原因だと主張した。また都市部の治安悪化や移民政策の不備を追及した。
 民主党は、最高裁が6月に否定した人工妊娠中絶の憲法上の権利擁護を掲げて、支持を挽回した。消費者物価が高止まり状態となり、一時は大敗も予想されたが踏みとどまった格好だ。激戦州をバイデン氏やオバマ元大統領が遊説し、民主主義の危機などを訴えて盛り返した。
 米メディアの調査では、有権者が判断材料として重視したのはインフレで、人工妊娠中絶が続いた。権利の否定には党派を超えた危機感がうかがえる。一方で、多くは支持政党の課題への対応を信頼すると答えている。党派色もまた鮮明になっているように見える。
 米国社会の分断は、民主主義の根幹である選挙制度を巡る相互不信に表れている。トランプ前大統領が敗れた2020年の大統領選は大規模不正があったとする「選挙否定派」の共和党候補は、地方を含め160人以上が当選を確実にした。
 根拠のない疑惑に同調する支持者も多い。選挙前には民主党のペロシ下院議長の夫襲撃事件が起きた。武装グループによる投票箱監視や、脅迫行為も伝えられた。
 選挙期間中には、過激派による暴力の恐れが増すとの見方も出ていた。連邦議会議事堂への襲撃事件が思い起こされる。
 反対意見を力で封じようとする風潮に危機感が強まる。民主主義の弱体化が危惧される。新たな摩擦を生じさせない冷静な対応は責務だ。
 共和党の躍進を阻み、バイデン氏は「有権者の民主主義を守りたいというメッセージ」と力説した。下院での現有議席の減少数が過去に比べて少ないことも自賛した。善戦との評価も聞かれるが、受け止め次第で厳しい方に振れかねない。
 バイデン政権はこれまで両院で主導権を握ってきた。今後、共和党の発言力が強まれば重要法案は通しにくくなり、政策実現は困難になりかねない。影響はウクライナ支援や対中関係など国際情勢に及ぶことが想定される。
 政策が停滞すれば、バイデン氏の大統領再選戦略も揺らぐ。近く出馬を正式表明する意向を示唆したトランプ氏に選挙結果が与える影響も注目される。論点がかみ合わないまま対立が先鋭化するようでは分断を深めるばかりだ。

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