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2022.11.05 08:00

【年金制度改革】国民巻き込んだ議論を

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 加速する少子高齢化により、公的年金制度の運営が厳しさを増している。国民の老後を支え続けられないとなれば、さらなる年金不信も招きかねない。そうならないためには、真摯(しんし)な議論と、それに基づく説得力のある改革案を示し、合意形成に努めるほかない。
 次の年金制度改正に向けた議論が厚生労働省の社会保障審議会で始まった。2024年に公表される将来人口推計をベースに、5年に1度行われる年金の財政検証を経て、25年に制度改正を目指すとしている。
 議論の念頭には、高齢者人口がほぼピークの4千万人近くになる2040年の状況がある。給付総額は増える一方、支え手である現役世代は15年の約7700万人が約6千万人となる。40年代半ばには、全ての人が入る国民年金(基礎年金)の受給水準が約3割落ち込むとされる。
 少子化のペースはこの試算を上回っているともみられる。受給水準の低下をどうカバーするかが今回の議論の焦点だ。
 国民年金は、40年間納付した場合の受給額で約6万5千円(22年度)であり、現行も十分とは言い難い。低年金者の続出を防ぐためには、目減りを抑える施策が優先されるのはやむを得まい。
 厚労省が対応策の柱に据えるのは国民年金保険料の納付期間を、現行の20歳以上60歳未満の40年間から65歳までの45年間に延長する案だ。
 確かに65歳まで働く人は増えてきた。とはいえ、自営業者や60歳以降は働かない人は負担が増す。大勢の人生設計に影響を与えることに変わりなく、国民を巻き込んだ議論にすることが不可欠だ。
 ほかに、2階部分の厚生年金財源の一部を国民年金に回す案が示されているが、不利益になる高所得者層からは反発が予想される。
 低年金者を減らすことを目的に、厚生年金への加入対象を個人事業所やパートにも広げる案も検討されているが、保険料を折半する事業者側が難色を示すことも考えられる。
 いずれの場合も、受給水準引き上げには新たな負担が必要で、利害調整は困難が予想される。消費税増税も取りざたされるが、議論するなら社会保障財源全体を見るべきで、導入のハードルも高いだろう。
 年金を巡って政府と与党は「100年安心」をうたった経緯がある。04年に、世代間のバランスに応じて年金額を自動カットする「マクロ経済スライド」を導入し、制度としての持続可能性は確かに担保された。
 しかし、給付額は安心できる水準ではなく、政治的キャッチフレーズが先走った状況に批判も出た。マクロ経済スライドはデフレ下では発動されないため、現在の年金財政悪化の一因にもなっており、課題が指摘されている。
 国民の年金不信は根深い。合意へ前進していくには、政府、行政の信頼回復が欠かせない。小手先の対応やつじつま合わせではなく、正面から議論し、丁寧に必要性を説明していくことが基本となる。

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