2024年 04月29日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2022.10.29 08:00

【総合経済対策】規模ありきに残る不安

SHARE

 物価高騰がのしかかる国民生活や企業活動を支えなければならないのは当然だ。しかし、財政支出を膨らませれば守られるものではない。目先の対応が迫られるとはいえ、財政が悪化すればこの先の柔軟な対策を難しくする。必要性や効果を国会で十分に審議する必要がある。
 政府が決定した総合経済対策は、国費の一般会計歳出が29兆1千億円と異例の規模になった。自民党の増額要求を反映し、当初案の25兆円ほどから大幅に伸びた。
 円安と資源高で輸入物価が高止まりし、生活必需品を中心に値上げが相次ぐ。9月の全国消費者物価は前年同月比3・0%上昇した。消費税増税の影響を除けば31年ぶりの伸び率で、上昇は13カ月連続になる。
 賃金の上昇は物価高に追い付かず、実質賃金はマイナスだ。日銀は景気の下支えを優先して、大規模な金融緩和の維持を決めた。米欧との金利差が意識されて円が売られやすい状況が続く。
 こうした中、政府は電気・都市ガス料金の負担軽減策に踏み込む。ガソリン価格を抑える補助金は継続する。また観光需要喚起策、妊娠、出産支援などを盛り込んだ。中小企業が生産性向上と一体的に行う賃上げへの支援も拡充を打ち出した。
 光熱費、ガソリン代負担は来年1月から9月ごろまで、標準的な世帯の総額で4万5千円の軽減を見込む。その上で、一定期間後には支援の幅を縮減する方針を示す。際限のない財政支出に歯止めが必要なのは間違いない。
 だが、料金上昇が続く場合はもちろん、止まったとしてもその水準に見合う賃上げがなければ支援打ち切りの影響は大きくなる。支出の継続要請も想定されるだけに、支援の在り方や対象を探る必要がある。
 予備費の扱いにも注意が必要だ。災害や新型コロナウイルス対策・物価高対応の予備費に加え、ウクライナ危機に起因する不測の事態を想定した予備費の創設が見込まれる。
 大まかな目的は決めても具体的な使い道は特定しない予備費は、国会軽視の財政運営に陥る懸念が指摘されてきた。使途は政府の裁量で決めることができ、国会の議決は求めない。ウクライナ関連という位置付けは、かなりの範囲でできそうだ。それだけに、使い道をどのように制限するのかは重要な論点となる。
 財源の一部は2022年度税収の上振れ分などで確保するが、大半を赤字国債の発行による借金で賄う。国の財政は一段と悪化する。
 英国では財政悪化への懸念から前政権が退陣に追い込まれた。減税策が財源の裏付けを欠き、国債や通貨が急落したためだ。もちろん、これをそのまま日本に当てはめることはできない。だが、国内総生産(GDP)に対する公的債務の比率は260%を超え、英国を大きく上回ることは重く受け止める必要がある。
 追加歳出を計上する22年度第2次補正予算案は臨時国会に提出される。負の側面もにらんだ説明と審議が必要だ。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月