2024年 04月30日(火)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2022.10.25 08:00

【習氏3期目入り】権力集中に強まる警戒感

SHARE

 周辺を自派で固めて権力の集中を図り、長期政権をもくろむ様相だ。しかし、統制の強化は緊張を高めかねない。影響は世界規模で広がることを自覚する必要がある。
 中国新指導部が発足し、習近平・共産党総書記(国家主席)が異例の3期目に入った。人事は習氏の側近を厚遇し、確執が取りざたされた人物は排除した。個人独裁を防ぐために取り入れた集団指導体制は放棄され、習氏の意向が党の重要決定に反映される1強体制が築かれた。
 指導部発足後、汚職撲滅を進めて国民の心をつかむ一方、政敵を失脚させて権力基盤の強化に突き進んできた。国家主席の任期制限を撤廃し、終身支配をも可能にする道も切り開いている。4期目以降をにらんでいるとの見方もある。
 外交姿勢はさらに硬化する気配が漂う。習氏は党大会での活動報告で、台湾統一を党の歴史的任務とした。今世紀半ばまでの実現を目指す国家目標「中華民族の偉大な復興」に欠かせないとの位置付けだ。
 そのためには、できる限り平和統一を目指すとしつつ、武力行使を排除しない考えを示した。台湾への軍事力による威圧を正当化し、台湾独立や他国の干渉を容認しない姿勢は明確だ。大会は、独立に断固として反対し抑え込むとする党規約改正案を承認している。
 8月に米下院議長が訪台した際、反発した中国は台湾周辺で軍事演習を実施し、ミサイルは日本の排他的経済水域(EEZ)にも撃ち込んでいる。台湾問題は日中関係にも波及している。
 活動報告で習氏は、核戦力強化を示唆している。今世紀半ばまでとしていた「世界一流の軍隊」建設の計画前倒しに触れた。米欧との長期対立は軍事にとどまらず、経済や科学技術にも及ぶことが想定される。このため、国家安全保障能力の増強に意欲をみせている。
 中国がウクライナに侵攻したロシアを非難せず、密接な関係を保っていることに諸外国の批判は根強い。東・南シナ海で強める覇権主義的な行動とともに、国際秩序を揺さぶる行為に強い警戒が向けられている。力の誇示より対話の姿勢が求められていることを認識しなければ、国際社会から尊敬は得られはしない。
 演説で習氏は、貧困脱却など2期10年の実績を誇示し、今世紀半ばまでに社会主義「強国」を建設する決意を表明した。独自の発展モデル「中国式現代化」を進め、経済格差を是正する「人民全体の共同富裕」の実現を目指す。収入格差の不満が蓄積すれば政権批判に向かいかねず、危機意識は強いだろう。
 新型コロナウイルスを抑え込む「ゼロコロナ」政策は成果を主張した。だが、都市封鎖による市民生活の圧迫や世界経済に及んだ負の側面にも意識を向けることが大切だ。
 新疆ウイグル自治区での深刻な人権侵害を国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が指摘し、改善を求めた。中国は反発しているが、政権運営の透明性を示すことだ。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月