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2022.10.23 08:00

【イプシロン失敗】ひるまず挑戦を続けたい

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 小型ロケット「イプシロン」6号機の打ち上げ失敗は、ロケットの姿勢制御に関わる装置がうまく作動しなかったのが原因だった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が明らかにした。
 イプシロン6号機は今月12日、鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から発射された。しかし上昇中に姿勢が乱れ、JAXAは搭載する衛星を地球周回軌道に投入できないと判断。指令破壊された。
 高知高専など全国8高専が共同で開発した超小型衛星も搭載されていた。学生らはさぞ落胆したに違いない。残念な結果だった。
 高度な技術が求められる宇宙開発は、どの国も失敗を重ねて発展してきた歴史がある。日本もひるむ必要はない。
 むしろ開発の手を止めてはならないだろう。米国や欧州、ロシア、中国などによる競争がますます激しくなっている。失敗を糧に挑戦を続けたい。
 JAXAによると、なぜ姿勢制御装置が正常に働かなかったかは特定できていない。ただし、配管や弁の異常など、いくつかの理由が想定されるという。
 イプシロンは来年にも打ち上げが予定されている。同じ失敗を繰り返さないよう、装置の問題点の洗い出しや改善が急がれる。
 日本の次期主力ロケットで大型のH3ロケットも初号機打ち上げを控える。H3の姿勢制御装置は製造メーカーや形状が異なるものの、仕組みは同様という。こちらも十分検証してほしい。
 H2Aロケットに代表される日本のロケットは高い打ち上げ成功率を誇ってきた。2013年に1号機の打ち上げに成功したイプシロンも、昨年の5号機まではすべて成功している。
 イプシロンは、小惑星探査機「はやぶさ」を打ち上げたM5ロケットの後継機で、日本の宇宙産業強化の切り札として期待されてきた。M5に比べ、大幅なコスト削減を実現している。
 エンジンは新規開発せずに既存の技術を活用し、組み立ても省力化。IT技術を駆使して、機体を自動点検する仕組みや、パソコン2台で済む管制方式も採用した。
 ロケットは一般的に液体燃料が用いられるが、日本は取り扱いが容易で、長期の室温保存ができる固体燃料を使う独自技術を持つ。イプシロンにも使われており、やはりコストの低減につなげた。 
 宇宙開発はいまやビジネスの時代であり、技術面の高さだけでなく、打ち上げ費用の安さも問われるようになった。米国では一度発射したロケットを再利用する技術も登場している。
 日本の宇宙技術の高さは小惑星探査でも実証済みだ。今後、米主導で本格始動する新たな月探査計画への貢献も期待されている。ただ産業化となると、後塵(こうじん)を拝している面が否めない。これまでに培った技術にさらに磨きをかける必要がある。

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