2024年 04月29日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2022.10.19 08:00

【旧統一教会調査】形だけで終わらぬように

SHARE

 霊感商法や高額献金が問題視されている世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対し、岸田文雄首相が、宗教法人法に基づく調査を行う考えを表明した。同法に定められた質問権を行使する初の事例であり、解散命令の請求も視野に入れる。
 もっとも、首相はこれまで、憲法が保障する「信教の自由」の観点から、教団への解散命令や調査には慎重な姿勢を示していた。方針転換の背景には、教団への消極的な対応が内閣支持率の下落につながっていることがあるのは否めまい。
 質問権の行使には「信教の自由を妨げないための留意」が規定されており、当然それは尊重しなければならない。だが教団に関しては、献金の勧誘などで違法性を認める判例が多数ある。9月に設置された政府の相談窓口には1700件以上の被害相談が寄せられた。
 教団の情報を集め、状況を正確につかむ必要がある。消費者庁の有識者検討会も「解散命令請求を視野にした調査」の必要性を提言した。質問権を使う根拠は十分にあろう。
 調査に入る以上、どのような結果であれ、相応の説明責任が求められることになる。調査が生煮えで終われば、政権批判や自民党批判をかわすためのポーズだったと、かえって批判が強まろう。
 意図はどうであろうと、岸田首相は教団の将来に大きく踏み込んだ。被害者や国民の納得を得るには徹底した調査しかない。
 教団への解散命令の請求は、「法令に違反し、著しく公共の福祉を害する行為」などが明らかになった場合に検討される。首相は1700件超の被害相談を挙げ、「刑法をはじめとするさまざまな規範に抵触する可能性がある」との認識を示す。
 過去、解散命令が出されたのはオウム真理教など2件のみで、刑法への抵触行為が理由とされた。これに基づき首相は、法令違反の要件について「民法の不法行為は入らない」ともした。この点は議論の余地があるのではないか。
 質問権は、オウム真理教による一連の事件を受けた宗教法改正に伴い設定された。行使は初めてであり、信教の自由に留意した慎重な作業が求められるのは事実だ。担当部署の態勢強化は不可欠だろう。調査の終了時期は明言されていないが、いたずらに長引かせるべきではない。
 忘れてはいけないのは、この調査をするからといって、自民と教団の関係について、疑いが消えるわけではないということだ。
 党国会議員と教団の接点が次々と明らかになり、政策に影響した疑いは払拭されていない。安倍晋三元首相や細田博之衆院議長が組織票を差配したとの報道もある。2015年に教団名が変更された経緯も不透明だ。これらの実態解明が引き続き求められる。
 霊感商法や高額寄付の問題では、消費者庁の有識者検討会が、被害防止策と救済策で提言をまとめた。教団の調査の一方で、これらも速やかに対応していく必要がある。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月