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2022.10.01 05:00

【露の4州併合】正当性なく認められない

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 捏造(ねつぞう)した民意を根拠に正当性を主張しても、支持は得られない。大国の身勝手極まりないシナリオだ。力による一方的な現状変更であり、容認できるはずがない。
 ロシアのプーチン大統領が、侵攻したウクライナで制圧した東部のルガンスク、ドネツク、南部のザポロジエ、ヘルソンの計4州の併合を宣言した。
 4州の親ロシア派が行った住民投票の結果、87~99%が編入を支持したとして、州の独立を承認した上で併合のための条約に調印した。
 だが、投票結果には大きな疑義がある。
 戦火に見舞われた州は、多くの住民が避難し、民意を問える状況ではなかった。住民投票では、武装兵を伴って選管関係者が戸別訪問し、住民は軍の圧力を受ける中で投票した可能性がある。反対を投じた人の名前が記録されたとの報告もある。
 公平性が疑われる情報が相次いでいる。一連の併合手続きはロシア側の茶番と言えるのではないか。
 そもそも、ウクライナへの軍事侵攻が主権の侵害だ。その上に重ねた蛮行を、ウクライナは「最もひどい国連憲章違反だ」と強く非難した。当然だ。欧米諸国もロシアへの制裁を強化する構えを見せる。
 ただ、対立が深まるほど解決が難しくなるのも事実だ。一方的な併合手続きが進み、戦況は泥沼化し、停戦協議は遠のいてしまった。厳しい展開だと言わざるを得ない。
 今回の4州の住民投票は突然発表され、準備期間はわずかしかなかった。ロシアが急いだ背景には、戦況の悪化があるのだろう。
 ウクライナ軍の攻勢で占領地域の維持が難しくなり、4州を自国の領土として既成事実化する狙いがあるとされる。プーチン氏は「領土が脅かされればあらゆる手段を講じる」とし、奪還攻勢が核兵器を使う口実になるとの考えをにじませる。
 ロシアが劣勢になるほど、核を巡る緊張が高まるジレンマがある。核使用のリスクは、より現実味を増していくのではないか。
 プーチン氏が兵員補充のために予備役の部分動員令を発表して以降、ロシアでは抗議デモが頻発し、大規模な国外脱出の動きが表面化するなど混乱が生じている。
 ロシアは2014年、4州と同じ手法でクリミア半島も併合した。クリミア侵攻は短期で死者もほぼ出さず、政権支持率は上昇したが、ウクライナ侵攻は誤算続きで、死傷者は米の推計で7万~8万人に上るとされる。独立系世論調査機関の調査では支持率は下落傾向にある。
 プーチン氏の足元が揺らいでいるのは間違いないだろう。孤立を深め、核使用に追い込まれる事態が懸念される。
 戦況は新たな局面に入った。ロシアへの圧力を弱めてはならないが、核の使用もあってはならない。国際社会の対応は難しさを増している。制裁に慎重な中国やインドも侵攻の長期化に懸念を示し始めた。停戦へあらゆる方法を探る必要がある。

高知のニュース 社説

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