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2022.09.30 08:00

【通信障害対策】KDDIの教訓生かせ

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 災害やトラブルなどで携帯電話の通信障害が起こった場合、契約している会社以外の通信網を使って連絡できるようにする―。そのようなシステムの導入に向けた検討作業が本格化した。
 「ローミング」と呼ばれるシステムで、総務省が有識者会議を立ち上げた。年内に方向性をまとめる。
 携帯電話サービスに対する私たちの依存度は年々高まり、欠かすことのできない社会インフラとなっている。非常時に通信網が途絶えてしまえば、人命にもかかわる。バックアップ体制を整えておくのは当然で、実用化を急いでもらいたい。
 検討のきっかけとなったのは、7月にあったKDDI(au)の大規模通信障害だ。
 60時間以上に及び、延べ3千万人を超える利用者に影響が出た。消防や警察への緊急通報もできなくなり、体調を崩した人が119番できないような事態も起こった。
 障害は、設備のメンテナンスで誤った作業手順書を使ったことが原因で、一部の交換機に過剰にアクセスが集中する「輻輳(ふくそう)」が起こり、復旧に時間がかかった。まずはそのような人為ミスが起こらないよう、各事業者がそれぞれ対策を徹底するのが重要だ。
 だが、人為ミスはゼロにはできない。大規模地震などの災害時は、予期せぬ被害も発生するだろう。ローミングはそれらに起因する通信障害に対して効果的だとして、2011年の東日本大震災後に議論された経緯がある。
 しかし、当時普及していた第3世代(3G)の携帯電話は事業者ごとに通信方式が異なっていたため、議論は先送りされた。
 その後、第4世代(4G)で方式が統一され、昨秋、NTTドコモによる全国規模の通信障害もあったにもかかわらず、KDDIの一件まで議論は手つかずだった。その意味では、腰を上げるのが遅かったと指摘されても仕方あるまい。
 実現に向けては、さまざまな課題も指摘されている。
 一つは「呼び返し機能」の扱いだ。緊急通報を受けた警察や消防が発信者にかけ直せる機能が義務づけられているが、ローミングにより他社の回線で通報した場合、着信側からかけ直すことができず、今後の調整が必要だという。
 緊急通報だけでなく一般通話も対象とするのか、どのような条件でローミングを発動するのか、といった点も論点だ。さらに、導入や運用にかかるコスト負担の在り方、一斉に使えなくなった時の対応なども、詰めておくべきポイントになる。
 調整項目は多いが、海外では多くの国が緊急通報のローミングを導入している。技術的にも可能とされる。KDDIによる大規模障害の教訓を生かさなければならない。
 今回の検討作業では、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社とも導入に賛成する意向を示した。総務省はしっかりと合意形成に努めてもらいたい。

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