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2022.09.27 08:00

【全数把握見直し】軽症者対策も問われる

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 全ての感染者を行政が把握してきた新型コロナウイルス対応が、見直された。感染者の情報を報告する「発生届」の対象が、高齢者ら重症化リスクの高い人に限定された。
 「全数把握」の見直しは、医療機関や保健所の負担軽減を目的に今月2日以降、9県で先行実施されていたが、昨日、本県も含めて全国一律で適用された。
 新型コロナ対応の大きな転換と言える。ウィズコロナ社会に移行する上での一つのプロセスでもあろう。目的通り、関係者の負担軽減に確実につなげると同時に、軽症者らのフォロー体制など新たな課題にしっかり対応する必要がある。
 これまで医療機関は、全患者の氏名や住所、職業、発症日などを保健所に届ける義務があり、保健所は健康観察や受診調整をしてきた。しかし全国で20万人以上の新規感染者が続いた感染「第7波」で業務が逼迫(ひっぱく)し、見直されることになった。 
 新しい仕組みでは、発生届の対象は、高齢者や健康不安のある人らに限る。軽症者ら対象外の人は健康観察をせず、容体が悪化した場合などは、各都道府県が設けた「フォローアップセンター」などの機関で相談を受け付け、医療機関の紹介も含めて必要な措置を取る。
 第7波の際、感染者の急増により本当に手当てが必要な人に医療資源を充てられない事態が伝えられた。今回の見直しは避けられない面もあっただろう。
 先行県では実際、負担軽減に効果が上がっているようだ。発生届の件数は従来の3割程度になり、「重症化リスクの高い人に注力できるようになった」などの報告も上がる。
 ただ、課題もある。対象外の感染者に目が届かなくなることだ。
 軽症だからといって楽観は禁物だ。東京で7、8月に報告された死亡者747人のうち、67人は自宅療養中で、うち半数は届け出が「軽症」だった。
 各都道府県の相談機関がしっかり機能する必要がある。センターへの登録作業は感染者に委ねられるため、登録してもらうための周知、工夫も欠かせない。感染者も万一を考え、登録を怠るべきではない。
 全数把握をやめ、感染状況の実態をつかみにくくなる懸念もある。対象外の感染者は入手できる情報が限られ、市町村別の状況も把握しにくくなるだろう。感染者も全員が登録に応じるわけではない。
 厚生労働省は、インフルエンザのように医療機関を指定した定点調査で、感染動向を把握する方法を研究している。適切な対策を取るためにも、精度の高い実態把握の方法を早期に確立することが求められる。
 全数把握の見直しは、第7波の下、政府が自治体の声に押される格好で決めた緊急避難措置だった。しかも当初は、判断を都道府県任せにし、「丸投げ」とも言われた。
 一連の対応が後手だった面は否めまい。第8波はインフルエンザの流行と重なる恐れもある。できる準備は速やかに行う必要がある。

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