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2022.09.23 08:00

【露編入住民投票】既成事実化は許されない

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 大国が軍事侵攻し、銃火器でにらみを利かす中で行われる住民投票に何の意味があるのか。力による一方的な現状変更の正当化、既成事実化は許されない。
 ロシアによる侵攻が続くウクライナで、東部や南部の計4州の一部を実効支配する親ロシア派が、ロシア編入に向けた住民投票を23日から27日にかけて実施すると発表した。
 東部のルガンスク、ドネツク両州は親ロ派の「人民共和国議会」が全会一致で決めた。南部のヘルソン、ザポロジエ両州では、ロシア軍が一方的に設置した「軍民行政府」のトップが文書に署名したという。
 各地の親ロ派が決めた形をとっているが、「ロシア系住民の保護」を掲げて侵攻したプーチン政権が主導しているのは間違いあるまい。
 プーチン大統領はクリミア半島で同様の手法を使っている。
 2014年2月、ウクライナの親ロ政権が倒れる政変を受けて軍を派遣。住民投票の結果、ロシア編入への支持が圧倒的多数を占めたとし、翌月には併合を宣言した。
 そもそもウクライナ憲法では、領土の変更は全土での国民投票を要する点が指摘された。実効支配はいまも続くが、まっとうな環境で行われた投票でもない。併合の正当性は住民投票にあるとプーチン氏が強調しても、認められるものではない。
 今回、ロシア側は制圧地域での住民投票について、当初はロシア統一地方選の日程に合わせた今月11日の実施を模索していたとされる。しかし、ウクライナ軍が東部や南部で反撃を強めたため頓挫したとの見方が出ていた。
 ロシア側は、東部ハリコフ州から敗走して危機感を強めている。反転攻勢を受けて最も重要なドンバス地域などの編入を急ぎ、「ロシア領」として既成事実化。支配を正当化する狙いとみられる。
 気になるのはロシアのメドベージェフ安全保障会議副議長の発言である。ロシアに編入すれば対象地域への「侵入」に対し、「全ての防衛力を使える」と主張している。
 プーチン政権は侵攻当初から核兵器使用の可能性を示唆し、国際社会をどう喝してきた。編入された地域への攻撃は核を使う口実になるという意図をにじませたのであれば、懸念が深まる。
 ウクライナ側は住民投票を「偽物だ」と非難し、結果の影響力を否定している。米欧主要国による「主権と領土の一体性の原則と懸け離れている」「法的には何の効果もない」との非難も当然だろう。
 侵攻が始まって間もなく7カ月。世界経済は混乱し、食品やエネルギー価格の高騰はウクライナを支援する国々の足元を揺さぶる。支援と制裁、報復の長期化に「ウクライナ疲れ」を心配する見方もある。
 ただ、プーチン氏が表明した予備役30万人の動員を含めて事態は新たな局面に入ったといえる。国際社会は関心を低下させることなく、容易ではなくとも早期停戦への道筋を探り続ける努力が必要になる。

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