2022.09.22 08:40
「波の花」桂浜包む 台風14号で 専門家「この規模すごい」
浜から舞い上がった「波の花」が桂浜水族館まで押し寄せた(19日午後1時50分ごろ、高知市の桂浜)
高知県が台風14号の暴風域に巻き込まれた19日、高知市浦戸の桂浜では、砂浜のほとんどが泡に包まれ、まるで〝銀世界〟のような光景が広がっていた。正体は「波の花」。冬の日本海ではよく見られる光景だが、専門家も驚くほどの量だった。
19日午前9時20分ごろ、桂浜水族館が「ずっとこの海を見つめてきたけど、こんな表情は初めてです」。大きな波とともに舞い上がる泡の写真を交流サイト(SNS)に投稿。後に、館内のあちこちに泡が付着した様子も伝えた。
同日午後、桂浜に向かった。浜辺は一般客は立ち入り禁止。風と波の音が重なり、海は絶えずゴオオオとうなりを上げている。坂を下った休憩所近くにいた警備の男性は「こんなん初めてよ。看板より先には行きなよ」と記者にくぎを刺し、再び浜に目を光らせた。
同館に向かう間も、強風で舞い上がった泡が顔にベチャリ。ぷうんと磯の香りが漂う。次々と押し上げられてくる泡で、たちまち足首まで泡まみれ。拭おうと泡に触れると、ねっとり糸を引くような粘り気があった。
大気循環の調査のため毎年、能登半島などで「波の花」を採取している東京大学大気海洋研究所(千葉県柏市)の浜崎恒二教授(54)によると、植物プランクトンや海藻類が多い時季と波の激しい攪拌(かくはん)が重なったことで、「海水に高濃度の有機物が溶け、洗剤で泡立つような界面活性作用により泡が消えにくくなった」と説明。
波の花自体は、冬場の日本海ではよく見られる現象だが、南国高知で「この(写真のような)規模の泡が発生したのはすごい」とびっくりしていた。
同館の職員は掃除に苦労した様子。こびりついた泡は高圧洗浄機でも、なかなか落ちず、スタッフ総出でひたすらぞうきんで拭い落としたという。秋沢志名館長(50)は「みんなへろへろ」と苦笑しつつ、「おかげで一斉清掃ができた。台風前よりきれいになったかも」と話していた。(山下正晃)