2022.09.18 08:35
栗焼酎の思い出 大正(四万十町)―土佐鳥瞰紀行(76)
梼原川と四万十川の合流点にひらけた集落。古来栄えた証拠か、四万十高校のある丘からは縄文時代の石器が出土している。
ここに、四万十川水系の水と無農薬米にこだわった酒造りを続ける酒蔵がある。特に地元の栗を使った焼酎は優しい味わい。夏や秋の暑い夜には水割りで、冬の長い夜には湯割りでと杯が進む。
2000年ごろに起きたプレミアム焼酎ブーム。そのあおりを受けたのは貧乏学生だったわれわれ。うまい、安い、珍しいと重宝していたこの栗焼酎が、店頭から消えた。
「酒蔵まで行ったら買えるかも」。思いつきでバイクを飛ばし、やってきた。集落のメインロード沿いに商店や金融機関が並ぶ様子は、想像していた山里とは違い驚いた。
酒蔵そばの店に入ると、あった。しかも定価。一升瓶の色が茶色でなく、薄い青色だったことが印象的で覚えている。いつも以上に安全運転で帰宅した。
「“あれ”があるって聞いたけど」。どうやって聞きつけたか友人が集まり、一晩で瓶は空になった。幸せな思い出である。(佐藤邦昭)