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2022.09.22 00:04

【K+】vol.189(2022年9月22日発行)

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K+ vol.189 
2022年9月22日(木) 発行

CONTENTS
・はじまりエッセイ letter191 中西なちお
・特集 スパイシーライフ|KAYA FARM
・フランス生まれの土佐人便り BONCOIN IN PARIS✉36
・高知を元気に! うまいもの熱伝 volume.63|四万十ポーク@四万十町
・K+インタビュー 話をしてもいいですか vol.191 伊藤まい
・Sprout Table vol.9 no name curry
・K+ cinema 記憶のなかの映画館⑱
・ちいさいたび #9
・気の向くままに お気軽 山歩き ;37
・日々、雑感 ある日 vol.22
・小島喜和 心ふるえる土佐の日々 第三十六回
・Information
・シンディー・ポーの迷宮星占術
・+BOOK REVIEW
・今月のプレゼント

河上展儀=表紙写真


特集
スパイシーライフ
KAYA FARM

仙頭杏美=取材 河上展儀=写真

唐辛子のおいしさに魅せられ、
その味を広めようと動く
唐辛子農家の刺激的な日々。




辛くてフルーティーな唐辛子

 何がきっかけで変わるか分からないのが人生というもの。ある夫婦にとってのそれは、「唐辛子」
 日曜市で偶然見かけた生のハバネロを食べてその味に惚(ほ)れ、唐辛子農家となった楠永泰之さんと妻・洋音(ひろね)さん。2018(平成30)年、KAYA FARMを立ち上げ、高知市仁井田で唐辛子を育て始め、翌年には日曜市に出店。ホットソースや塩漬け、一味などの加工品を手作りするほか、20(令和2)年には実店舗「カヤ商店」を同市竹島町にオープンします。
 現在、世界一辛いとされるキャロライナ・リーパーをはじめ、ハバネロ、ハラペーニョ、韓国唐辛子など、世界各国が原産地の唐辛子約20種類を栽培。「唐辛子は、辛いけど、おいしい。フルーティーでこくがある品種もあり、種類によって味も香りも違うので、コーヒー豆を選ぶように、その日の気分や料理に合わせ、世界の唐辛子を選んで味わってもらいたいです」。誰もが当たり前のように唐辛子を楽しむ未来が来てほしいというマニアックな夢を掲げ、唐辛子の魅力を伝えようと夫婦は活動しています。
 「唐辛子を作り始めて、人生が楽しくなった」と泰之さん。2人の日々は、唐辛子のように刺激に満ちています。


見た目がかわいいハバネロは、タカの爪の4倍の辛さ。キャロライナ・リーパーは、さらにその4倍の辛さだそう

見た目がかわいいハバネロは、タカの爪の4倍の辛さ。キャロライナ・リーパーは、さらにその4倍の辛さだそう



自分の好きな野菜を作る

 実家がグロリオサと生姜をハウス栽培する農家の泰之さんは、大学卒業後に家業に入り、農業に携わってきました。洋音さんは、高校卒業後に高知市内の革製品専門店で革職人として働き、独立後は母と一緒に洋服と革の修理店を営んでいたそうです。
 結婚後、洋音さんは泰之さんに言います。「自分の好きな野菜を作ってみたら?」。好きな野菜を育て、自ら売り先を広げる農家になりたいと思いつつも一歩踏み出せなかった泰之さん。ハバネロを知り、興味を持っていた泰之さんの背中を押すように、数種類の唐辛子の苗を買ってきた洋音さん。そこから、唐辛子農家としての生活がスタートします。
 「食卓に、刺激を」をコンセプトに、唐辛子を中心に、料理のアクセントになるカレーリーフなどハーブ類の栽培を始めます。



左から激辛のホットソース(キャロライナ・リーパー、トリニダード・スコーピオン、ブート・ジョロキア使用)、オレンジハバネロのホットソース、韓国唐辛子の塩漬けペースト

左から激辛のホットソース(キャロライナ・リーパー、トリニダード・スコーピオン、ブート・ジョロキア使用)、オレンジハバネロのホットソース、韓国唐辛子の塩漬けペースト





有機農法で工夫しつつ育てる

 現在、2棟のハウスで、独学しながら有機農法で唐辛子を育てている泰之さん。虫が発生しても、薬は使わず、有機由来の方法で対策して耐え忍ぶしかないなど苦労は多いものの、「工夫したら、毎年、味も技術も良くなり、自分で作っている感覚があって面白い」と泰之さん。
 日曜市に出店し始めてから、想像以上に辛い物好きの人がいることを知り、励みに。また、直接お客さんの評価が聞けたり、飲食店の友人から唐辛子やハーブを作ってほしいと頼まれたりするようになり、それが泰之さんの新たなやりがいとなっています。
 特にアジアやメキシコ料理など生の唐辛子を使う店から重宝され、県内外からの受注が増えたそう。「いつでも唐辛子を届けられるよう、栽培面積も増やしたい」と、泰之さんは意気込みます。


今年初めて作った「香辛子」。ハバネロに似たフルーティーな香りがありながら、辛さがほとんどない品種

今年初めて作った「香辛子」。ハバネロに似たフルーティーな香りがありながら、辛さがほとんどない品種







プロフィール
楠永泰之さん
大阪の大学を卒業後、家業に入って農家に。日曜市でハバネロと出合ったことを機に唐辛子農家となり、KAYAFARMを立ち上げ、唐辛子のおいしさを伝えようと活動中。高知市出身。41歳

楠永洋音さん
高校卒業後、高知市内の革製品専門店で革職人として働く。泰之さんと結婚後、唐辛子の加工品作りやパッケージデザインなどを担当。カヤ商店では料理を振る舞う。高知市出身。40歳



気軽に唐辛子を食べる機会を

 泰之さんが育てた唐辛子を、加工品や料理に変え、その味を伝えるのは洋音さんの担当です。加工品を作る工程は、まさに「刺激的」。大量の唐辛子を加工する際、その辛み成分で体調を崩すことがあるため、防護服を着て作業。それでも「気軽に唐辛子を食べてほしい」と、加工品作りに励みます。
 「例えば、オレンジハバネロのホットソースは、ピザ、パスタ、肉料理にかけたり、ドレッシングに足したりと何でも使えます。フルーティーな香りの後に来るピリ辛感がやみつきになりますよ」と洋音さん。そんなKAYA FARMの商品が買え、ランチが味わえる店として始めたのが「カヤ商店」です。開店した矢先、新型コロナウイルスが流行し、店を開けては閉める日が続きましたが、今年の8月から営業を再開しています。




日替わりのランチセット。今回は、自家製のレモングラスやコブミカンなどのハーブ、ホットソースなどを味付けに使用

日替わりのランチセット。今回は、自家製のレモングラスやコブミカンなどのハーブ、ホットソースなどを味付けに使用


洋音さんが製作した革製品も販売

洋音さんが製作した革製品も販売





暮らしに少しの変化を加えて

 洋音さんが料理で大切にしているのは、「県内農家さんの野菜をたっぷり使うこと」。派手な物好きという洋音さんだけに、盛り付けはカラフル。その隠し味に、自作の加工品やハーブ類を使っています。ランチに添えられたホットソースはかけ放題です。
 「ずっと物作りに携わってきましたが、昔も今も目指すことは同じ。人に喜んでもらうことが一番です」と洋音さん。唐辛子を通して、驚きと、おいしさを伝えるアイデアが次々に浮かぶそうで、これから先に生まれる新商品がまた楽しみです。まだ、作物としてマイナーな、世界の唐辛子の可能性を探り、新しいことに挑戦する夫婦の暮らしは、ピリリとパンチが効いていました。
 料理の味がちょっと変わるのも日々の刺激。変化を楽しむために、食卓にぜひ、唐辛子を。


夏は日中40度を超えるハウス内。4月に苗を植えて6月から青い唐辛子が、7月からは熟し、鮮やかに色づいた唐辛子が収穫できるように

夏は日中40度を超えるハウス内。4月に苗を植えて6月から青い唐辛子が、7月からは熟し、鮮やかに色づいた唐辛子が収穫できるように


アジア雑貨やバッグ、食器など、洋音さんがセレクトした品々が並ぶ店内

アジア雑貨やバッグ、食器など、洋音さんがセレクトした品々が並ぶ店内


2人の娘がいる楠永さん夫婦。子連れでゆっくりと食事が取れる店にしたいと2階にキッズスペースを構える

2人の娘がいる楠永さん夫婦。子連れでゆっくりと食事が取れる店にしたいと2階にキッズスペースを構える



◎KAYA FARM・カヤ商店
高知市竹島町85-9
営/11:30~17:00 P/3台
休/日〜水(イベント出店などにより不定休あり)
HP/https://kayafarm.thebase.in/
最新情報、問い合わせはInstagram/@kaya_farm
※新型コロナウイルスの流行状況により、
 営業日が変更になる場合あり
※商品は、店舗とオンラインショップなどで販売
※不定期で、日曜市の出店や、高知県庁の売店で弁当を販売

掲載した内容は発行日現在の情報です。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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