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2022.09.15 08:00

【物価高対策】規模より効果優先で

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 物価の上昇が止まらない。8月の国内企業物価指数は前年同月比9・0%の上昇となり、18カ月連続で前年を上回った。
 消費者物価指数は7月は2・4%上昇し、11カ月連続となった。生活に欠かせないエネルギーや食料が値上がりした。ロシアのウクライナ侵攻を受けて資源や原材料の価格が高騰して、円安で輸入物価が押し上げられている。
 幅広い分野で「値上げの秋」を迎えている。消費者物価は今後、3%上昇の予測もある。輸入コストの価格転嫁が進めば家計への打撃は大きい。生活防衛策を一段と強めざるを得なくなる。一方、価格転嫁しきれなければ企業収益は圧迫され、雇用維持や賃上げが難しくなる。企業倒産は8月も前年実績を上回り、5カ月連続となった。
 世界経済の減速で資源高は一服状態だが、円安は一段と進んでいる。8月の米消費者物価指数は市場予想を上回った。記録的なインフレが長期化するとの観測から、米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ抑制に向けて大幅な利上げを続けるとの見方が強まった。
 運用に有利なドルに市場資金が集まり、円安ドル高が進む。外国為替市場では1ドル=145円に迫る動きを見せている。また、景気後退への懸念からダウ工業株30種平均は急落し、この流れにつられて東京市場もきのう大幅下落となった。
 欧州中央銀行(ECB)も、単一通貨ユーロが誕生してから最大幅となる利上げでインフレと向き合う。欧州は対立するロシアへのエネルギー依存度が高い。冬場へ向けて供給不安から景気後退の恐れがあるが、当面の景気より記録的な物価高への対応を優先する姿勢だ。
 日銀の大規模金融緩和政策は、米欧の引き締め政策との違いが鮮明になっている。米欧の動きをにらみながらの日本の対応が焦点となる。
 物価高による生活への影響を緩和するため、政府は住民税非課税世帯に1世帯当たり5万円を支給するほか、9月末が期限となっている石油元売り会社へのガソリン補助金を延長することなどを決めた。岸田文雄首相は、10月に総合経済対策を策定する方針を表明している。
 新型コロナウイルス対策と合わせて、2022年度予算の予備費から3兆円台半ばを充てる。また、総合経済対策の財源確保へ補正予算を編成する意向で、財源は多くを国債に頼ることになる。
 重要なのは、これまでの施策の有効性を検証し、新たな対策への期待や積算の根拠を明確にすることだ。説明が不十分では取り組みに疑問が向けられ、ばらまきの批判が繰り返されかねない。
 内閣支持率が低下傾向となればなおさら、規模を膨らませたくなるだろう。だが、それでは財政規律をゆがめることに意識を向けなければならない。暮らしへの負担を軽減するために現状への対策はもちろん必要だ。さらに、長期的な観点を見失わない姿勢も欠かせない。

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