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2022.09.13 08:00

【沖縄県知事選】政府は民意と向き合え 

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 民意を顧みないかたくなな姿勢では反発を強めるばかりだ。改めて示された拒否の意思に、政府がどう向き合うのかが問われている。
 任期満了に伴う沖縄県知事選は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設反対を訴えた無所属現職、玉城デニー氏が新人2氏を破り再選を果たした。移設反対派が勝利したのは3回連続となる。
 2019年の県民投票では、埋め立て反対が7割を超えている。玉城氏は「建設工事は直ちにやめるべきだ」と訴える。しかし、政府は早々に辺野古移設が唯一の解決策と繰り返し、「着実に工事を進めていく」と移設方針の堅持を強調した。
 辺野古では埋め立て予定地で軟弱地盤が見つかっている。玉城知事は、改良工事のため防衛省が申請した設計変更を不承認とした。国土交通相の是正指示などで対抗する国と法廷闘争に入っている。
 国は埋め立てを始める前に軟弱地盤の存在を分かっていながら、開始後まで非公表としていた。既成事実化をもくろんだと見られても仕方ない。不誠実な対応が不信感を深めていく。戦没者の遺骨が混じった土砂が埋め立てに使われる可能性も指摘された。
 沖縄はことし、本土復帰から50年を迎えた。復帰前年、琉球政府は日本政府に提出した建議書で、「基地のない平和の島」としての復帰を望んでいる。しかし、今も在日米軍専用施設面積の7割が集中する。
 基地負担は関連する事故や犯罪、環境汚染などにも広がる。日米地位協定の抜本見直しが繰り返し求められてきたが実現していない。
 政府は県との対立から、振興策を絡めた「アメとムチ」の手法を続ける。自民、公明両党が推薦した新人は移設容認を明確に打ち出し、振興予算の増額を掲げた。
 沖縄振興費は22年度、概算要求段階で10年ぶりに3千億円を割り込み、当初予算は2700億円弱にまで落ち込んだ。23年度概算要求は前年度をさらに200億円下回る。減額で圧力をかけ、選挙を有利に進めたい思惑が指摘された。
 東アジアの安全保障環境は厳しくなっている。岸田文雄首相は防衛費の相当な増額と、あらゆる選択肢を排除しない姿勢を示している。
 沖縄は安保の最前線に立たされる。首相はまた、沖縄が大きな基地負担を担っていることを重く受け止め、負担軽減の目に見える成果を積み上げていくと述べている。それが辺野古移設の強行では、移設反対派を再び知事に選んだ民意とは相いれないだろう。
 安倍晋三元首相の国葬や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題への岸田政権の対応に批判が向けられる。首相が繰り返す「丁寧な説明」とは裏腹に、焦点をはぐらかし、説明責任を果たさない姿勢に不満が強い。理解が進むはずはない。
 首相が自らの政治姿勢に掲げる「聞く力」を発揮するべきだ。玉城氏が求める対話を真摯(しんし)に重ねることが求められる。

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