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2022.09.10 08:00

【自民と教団】調査で幕引きにならない

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 全体像を把握しなければ、新たな取り組みの効果も期待が薄れる。関係を断ちきれば終わりではなく、これまでの関わりを明らかにすることが疑念の解消につながる。
 自民党に所属する国会議員379人のうち179人に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側と何らかの接点が確認された。党が公表した。
 それによると、議員2人は組織的な選挙支援を受けるなどした。また、ボランティアによる選挙支援や、教団側からの寄付やパーティー収入、教団側への会費支出などが行われていた。祝電の送付だけなど比較的関係が薄いと判断した議員は氏名の公表を見送っている。
 大半は関係を認識していなかったと釈明するが、関係の濃淡はあるにしても教団側の党内への浸透ぶりが浮かぶ。自民と教団の関連団体とは政策的親和性があり、教団は自民との関係性を深めて社会的信用を得ようとしたとの見方も出ている。
 岸田文雄首相は「結果を重く受け止め、国民の信頼回復に向け努力したい」と述べた。だが、教団との関係はまだ全容解明にはほど遠い。調査は現役国会議員のみで、地方議員は外している。焦点である政治や行政がゆがめられなかったのかは不明のままだ。信頼回復にはその解明が欠かせないはずだ。
 安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに教団と政界の関係に関心が集まる中、自民所属議員との接点が相次いで判明した。当初、党幹部は議員と教団との関係を調べるかどうかを聞かれ、「党とは一切関係ない」として消極姿勢を示していた。別の幹部は「何が問題か、よく分からない」と言い切る状況だった。
 しかし、霊感商法などで反社会的とみられる団体との関係の解明を求める意見は根強い。安倍氏の国葬決定と相まって、党の姿勢に批判が強まった。内閣支持率の低下もあり、ようやく調査に乗り出した。
 ただ、「点検」との位置付けで、あくまで各議員の自己申告でしかない。内容も接点の確認にとどまり、調査の不十分さを指摘する意見もある。党としては報告を集約しただけだと予防線を張る意図が取り沙汰される。関係の深さなどに踏み込みたくないという思いがにじみ、かえって疑心を招いてしまう。
 首相は、社会的に問題が指摘されている団体との関係を持たないことを党の基本方針とすると表明した。地方議員も同様の対応を求めるとする。だが、そもそも党所属国会議員の半数に迫る人数に接点があることを重く受け止めなければならないだろう。なぜそうした関係が築かれ、これまで続いてきたのかは判然としないままだ。
 安倍氏と教団との関係の検証が重要だ。選挙の際、安倍氏が組織票を差配したとの報道もある。首相は否定的だが、真相究明の鍵となる。
 教団との関係や国葬の判断を巡り、首相は先の会見で「政治の信頼が揺らぎつつある」との認識を示した。立て直しには、首相の言う「丁寧な説明」に沿う対応が必要だ。

高知のニュース 社説

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