2022.09.08 08:38
アカメの空気が吸いたい 怪魚ハンターと仲間たち―魚信 はっぴぃ魚ッチ
野村尚弘さん(前列中央)が釣ったアカメ。仲間たちが祝福した
浦戸湾でアカメを狙った怪魚ハンター・小塚拓矢さん
富山県在住の小塚拓矢さん(37)。南米のアマゾンやアフリカなど56カ国を巡り、ナマズやバスの仲間のほか、見た目が怪獣や恐竜のような魚を釣りまくってきた。
浦戸湾釣行は10年ぶり。海外などの遠征時に携行しやすい小継ぎロッドを開発している仲間と訪れた。
「高知はすごい。高知に来るなら、国内で他のどこにも寄る必要がない」
日没後。ボートでポイントに到着すると、「ザザザー、バホッ!」。暗い水面は捕食者から逃げ惑う魚たちで沸き立っている。期待が膨らむ。
「ジャッポーン!」と、ド派手なルアーの着水音が響く。小塚さんが投げていたのは、22センチのビッグベイトを連結した全長45センチの特大サイズ。
「これで釣ったら面白いでしょ? 何か広がるでしょ? それが冒険」
しかしこの夜、アカメは姿を現さなかった。
◇
小塚さんが投げたルアー。22センチを二つ連結
同行していた野村尚弘さん(35)=大阪府=が、136センチ、32キロのアカメを釣り上げたのだ。
浦戸湾とは別の県内河川でキャストしていた午前5時15分ごろ、パーンと破裂音がして、薄暗い水面がいきなりはじけた。
「いやもう、えげつないトルク。焦った…」
開発した竿(さお)を信じて、ゴリ巻き勝負は約6分。巨大魚は取り込み寸前に首を振って暴れたが、最後は野村さんの手で横たわった。高知に10年通った末の自己記録。「うれしいけど、まだまだ通いたい。世界記録を目指して」
別の釣り場にいた小塚さんらも急行して祝福。一緒に計測し、蘇生措置を施して巨体を水中へ見送った。
小塚さんは、世界で釣った魚に異名を付けてきた。
例えば、ピラルクーなら「神龍(シェンロン)」。そして今回、アカメをこう呼んだ。
「最果てのラテス」
ラテスとはアカメの仲間の属名で、生息地は主にアフリカや東南アジアなどの淡水・汽水域。小塚さんは楽しげにこう想像する。
「海水で泳げるやつが徐々に北上してきて、『めっちゃ居心地えーやん!』って浦戸湾や高知にすみ着いた。それが日本固有種のラテス・ジャポニクス(アカメ)。だから『最果て』」
8月釣行では、怪魚ハンターの竿にアカメが掛かることはなかった。「釣れなくてもいい。あの赤い目を思ってルアーを投げたい。そういう高知の空気を吸いたくなるんです」(本紙・ハチ)