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2022.09.08 08:00

【英新首相就任】誠実な対応で結束強化へ

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 不祥事と真剣に向き合わなかったことで前政権は求心力を失ってしまった。新政権が国民の信頼を取り戻すには誠実な姿勢が基本となる。それが国際社会での存在感にもつながるはずだ。
 英国の新首相にリズ・トラス氏が就任した。女性首相は故サッチャー氏、メイ氏に続き、英史上3人目となった。
 就任後初の演説で「嵐を乗り切れる」と呼び掛けたことが、直面する課題の重さを物語る。国内の懸案への対処はもちろん、ロシアのウクライナ侵攻で揺らいだ国際秩序の再構築へ向け、関係国との結束した取り組みが求められる。
 英国はエネルギー価格が押し上げられ、記録的な物価高騰に直面している。インフレ加速が予測され、景気後退が懸念される状態だ。
 トラス氏は党首選で大規模な減税を掲げた。勝利後には、公約実現へ近く対策を示し、経済成長など大胆な計画を実行すると表明した。
 世論調査では生活費上昇への対処を求める意見が多い。対策の成否は政権の評価に直結することになる。一方で国防費の増額もにらみ、財政支出が膨らむことが想定される。インフレと財政をうまく調整しながら、政策をいかに具体化するかが問われることになる。
 外交面ではウクライナ危機対応が喫緊の課題のままだ。ゼレンスキー大統領との電話会談で、ジョンソン前首相の路線同様に連携とロシアに強い姿勢で臨むことを約束した。
 気になるのは、対ロ政策やウクライナ支援を巡り、米国や欧州各国との間に意見の相違もうかがえることだ。党内右派勢力の支援で党首選を勝ち抜いた。強気とされる姿勢がさらに強硬になっては協調関係を崩しかねない。注意が必要だ。
 トラス氏は前政権でEU離脱後の英国の通商政策を担ったことがある。日英の経済連携協定(EPA)をまとめ、環太平洋連携協定(TPP)加盟申請にも関わってきた。
 前政権が重視したインド太平洋地域への関与を引き続き強め、EU離脱で停滞した経済政策の幅をアジアへと広げるとみられる。日本との連携も深化させる方針のようだ。協力関係を積み上げていきたい。
 香港の統制強化や台湾情勢などを受けて、英国は中国への批判を強めてきた。トラス氏はバイデン米大統領と電話会談で、共通の価値観に基づく連携強化や、中国への対処を確認した。日本にも関係するだけに進展を注視したい。
 英国とEUの関係は修復されていない。EU主要国のドイツ、フランスは政権基盤が盤石ではない。ロシアはエネルギーや穀物を材料に同盟に圧力をかけている。こうした状況下で英EUの対立が続けば、欧州は安定を欠くことになる。新たな関係を探ることが重要だ。
 英国内には、トラス氏の強硬姿勢や率直な物言いを評価する一方、政治的立ち位置を急激に変える姿勢に批判もあるようだ。早くも正念場を迎えている。

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