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2022.09.06 05:00

【新疆人権問題】国連報告書と向き合え

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 基本的人権は国連憲章にも盛り込まれる人類の普遍的な価値だ。それを軽視し、ないがしろにする国は他国から権威や信用を得られない。中国政府は自覚すべきだ。
 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が、中国新疆ウイグル自治区に関する報告書を発表した。具体事例を挙げながら、少数民族ウイグル族に対する「深刻な人権侵害」を認めた。中国政府には改善を勧告し、拘束者の解放や差別的な法律・政策の撤廃などを求めた。
 中国側は報告書の内容を否定している。しかし、実態解明に一貫して消極的なスタンスであり、説得力を伴わない。報告書に真摯(しんし)に向き合わなければならない。
 同自治区は、人口の5割近い約1千万人をイスラム教徒のウイグル族が占める。文化の違いや経済格差などから、漢民族中心の抑圧政策への反感が強く、過去に当局が「テロ」と呼ぶ暴動などが発生。政府が監視と取り締まりを強め、収容施設で思想改造などの人権弾圧が行われているとして、国際人権団体や欧米諸国が問題視している。
 報告書は、各地に開設された「職業技能教育訓練センター」と呼ばれる収容施設の経験者ら約40人に聞き取りを行い、作成された。
 収容者の多くは法的根拠のないまま拘束され、自由を剥奪された。施設ではウイグル族の言語や宗教的行為が禁じられ、監禁、拷問など非人道的な処遇が行われた。これらの差別的で恣意(しい)的な身柄拘束が、「人道に対する罪に相当する可能性がある」とした。
 国連機関が国際法上の犯罪に言及した重い指摘だと言える。
 調査を巡っては、中国は今年5月、バチェレ人権高等弁務官の訪中を受け入れたものの、行動を制限したとされる。滞在は当局の監視下、2日間にとどまった。
 今回の報告書の公表も何度も延期された。中国が公表しないよう他国に外交圧力をかけていたという。公表日時はバチェレ氏の任期満了日の夜であり、せめぎ合いの激しさをうかがわせる。
 報告書に対する中国の反発は激しい。「偽情報のごった煮。全く信頼性がない」とし、OHCHRを「発展途上国を懲らしめようとする米国や西側の共犯者」と非難する。
 そこまで強弁するのであれば、同自治区の実態をオープンにすればよい。中国は国連の安全保障理事会の常任理事国であり、かねて「国連中心の国際秩序」を主張してきた。それが筋だろう。
 OHCHRは一時、バチェレ氏の中国に配慮するような言動で国際社会から批判されたが、責任を果たした格好だ。引き続き、中国に改善を求めていくことが重要だ。
 人権問題に対して日本も、昨年10月に発足した岸田政権が担当の首相補佐官を新設し、対応を強化している。今回の報告書の早期公表も訴えてきた。他国とともに、さまざまなレベルで中国側に働きかけを重ねてもらいたい。

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