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2022.09.05 08:35

太陽光「自社消費」急増 高知県内企業、電気代高騰受け 部品不足で設備「奪い合い」

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高知日野自動車が工場の屋根に敷いた太陽光発電パネル(高知市大津甲)

高知日野自動車が工場の屋根に敷いた太陽光発電パネル(高知市大津甲)

 ウクライナ危機や円安により電気代が急騰する中、高知県内企業が太陽光発電の設備を、売電目的ではなく「自社消費」のために導入するケースが急増している。経費削減と合わせて、近年盛んなSDGs(持続可能な開発目標)に沿って環境に配慮した経営を進めたいという狙いもある。ただ、世界的需要と半導体不足によって、発電設備は「奪い合い」になるほどの品薄になっている。

 「『自家発電』の商談は昨年まで年10件。それがこの半年で100件以上になった」。太陽光発電設備を販売する宮地電機(高知市)の近藤浩樹常務(58)が県内企業から相次ぐ要望に驚く。

 ただ、ウクライナ危機は世界規模でエネルギー問題を呼び起こしたのに加え、設備に不可欠な半導体は深刻な不足状態が続く。同社が商談をまとめようとしても、メーカーから「物がない」と断られるケースが出てきたという。

 「特に産業用の設備は不足していて、新規注文だと設置まで半年以上かかる。市場は既に奪い合いだ」

 太陽光に脚光が集まる理由の一つが、電気料金の急騰だ。

 四国電力によると、火力発電用の燃料が上がったため、7月時点で法人向け電気料金は1年前より3割上昇。8月からはさらにそこから1、2割上がっている。

 太陽光発電などの再生可能エネルギーを巡っては、2012年に固定価格買い取り制度(FIT)が始まったものの、買い取り価格は年々下降。現在は1キロワット時当たり10円(50キロワット以上の場合)と、当初の4分の1だ。

 企業にとっては、設備投資をしてまで売電する利点が薄まったところに、コスト削減の需要が一気に増している。

■「元取れる」
 スーパーは食品冷蔵ケースで電気を大量に使っており、電気料は悩みの種だ。サンプラザ(土佐市)は月額1億円以上かかっているといい、12月に自社店舗に太陽光発電(約54キロワット)を設置する。

 担当者は「FITで投資を回収するのは難しいが、電気代が上がっており、自家消費なら6、7年で元を取れる」とみる。

 別のスーパーチェーンは「値上げ分だけで年間1億円以上」で、来年度までに自家発電用を2基導入する。担当者は「FITの価格低下で見合わせていた『日の当たる屋根』を活用した」という。

■環境配慮が契機
 SDGsを意識した設置も進む。高知機型工業(香南市)は20年1月、出力264キロワットの設備を約6千万円かけて導入した。

 きっかけは6年前、北泰子副社長(67)が県内の会合でSDGsのバッジを着けた経営者と会ったこと。「環境や貧困問題に取り組む姿に、今後は環境への配慮が問われる時代だと考えた」と、社内合意に努めたという。

 現在、晴れの日は全てクリーンエネルギーでまかなえる。雨天時は四国電力から電力を購入するが、「年間の半分は太陽光。投資は5年ほどで回収できる」と期待する。

 自動車産業も「脱炭素」の動きが強まる。

 高知日野自動車(高知市)は昨年11月の本社移転に合わせ、工場の屋根に約50キロワットのパネルを積んだ。担当者は「月10万円以上は抑えられているし、業界全体で二酸化炭素を減らすことが大きな流れだ」と強調した。

 竹ハンドルなどを生産するミロクテクノウッド(南国市)も、年内に7千万円かけて約300キロワットのパネルを導入する。同社に出資しているトヨタグループの東海理化(愛知県)が、サプライチェーン(部品供給網)全体の脱炭素に取り組み始めたのが契機だという。

 ミロク―の片山弘紀社長(64)は「大手自動車メーカーは、再生エネルギーを積極活用していない取引先への発注を絞ることも考えられる」と、今後を見立てた。

 紛争の行方も急激な円安も先行き不透明な中、太陽に再び熱い視線が注がれだした。(安岡仁司)

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