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2022.08.24 05:00

【ウクライナ半年】停戦への道筋を描き出せ

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 ロシアがウクライナ侵攻に踏み切って半年になった。街は破壊され、死傷者は増え続けている。攻防は激化し、紛争は長期化する見方が強まる。犠牲をこれ以上大きくしてはならない。停戦と対話で事態の打開を図ることが重要だ。
 ロシアはウクライナ東部地域のロシア系住民の保護や自国の安全保障を掲げ、侵攻を正当化する主張を繰り返してきた。真偽不明の情報も巧みに発信している。ウクライナの核保有や生物兵器開発に対処する必要性も織り交ぜて、国内の支持を高めてきた。
 短期決戦の思惑はウクライナ側の徹底抗戦で外れた。攻撃は激化して学校や商業施設にも向けられ、核関連施設にまで及んだ。
 占拠した南部ザポロジエ原発は軍事拠点化し、重大事故の懸念が強まる。調査団の受け入れも進んでいない。核兵器使用の可能性さえほのめかしている。緊張を高めて国際社会を脅迫することは許されない。
 武力で国家主権を踏みにじる行為は、国際秩序を揺るがせた。米欧や日本は経済制裁で対抗した。金融決済網を遮断し、ロシア産の石油や石炭の輸入禁止措置に踏み込んだ。
 この影響で、ロシア国債はデフォルト(債務不履行)に陥ったと伝えられた。ことしはマイナス成長の見通しが示されている。
 その一方で、一時は大幅下落したルーブル相場は回復している。主要な国家収入である原油や天然ガスの価格は高騰し、中国やインドなどへの輸出が制裁の抜け道となってロシア経済を下支えしている状況だ。
 侵攻は世界経済にも大きな影響を与えている。新型コロナウイルス禍からの経済活動再開と重なり、食品やエネルギー価格は高騰した。ウクライナの穀物輸出が滞り、食料危機への懸念が強まった。
 物価高騰はウクライナを支援する国々の足元を揺さぶる。米国は、秋の中間選挙をにらんで国内問題に関心が移り、物価は重要な論点となる。ロシアのエネルギーに依存する欧州各国では需要が高まる冬場に向け、制裁と支援を巡る議論が高まることは必至だ。その動向は欧州の結束にも関わってくる。
 日本にも物価高がのしかかるが、避難民の受け入れなど支援を継続する必要がある。東アジアの安全保障環境が厳しくなる中、ロシアの侵攻は防衛力への意識を高めた。危機意識が高まればなおさら、その在り方には冷静な議論が必要となる。
 欧州への軍事圧力をロシアが強めたことで、北欧のフィンランド、スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟へ批准手続きが進む。プーチン大統領は、両国が伝統的な軍事中立路線を転換する結果となったことを重く受け止めるべきだ。
 最近、ロシアが強制編入した南部クリミア半島のロシア軍基地で爆発が相次いでいる。ウクライナ側の攻撃であればロシア側の攻撃が激化する可能性もあり、新たな局面を迎えかねない。国際社会が結束して停戦交渉への道筋を探る必要がある。

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