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2022.08.23 08:40

産卵のウミガメ、陸地の照明で迷走...海の方向勘違い 高知県黒潮町 保護メンバー「光に配慮を」

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(写真1)母ガメは産卵後、海とは違う方向にある照明へ(写真はいずれも黒潮町こまじり浜、溝渕幸三さん提供)

(写真1)母ガメは産卵後、海とは違う方向にある照明へ(写真はいずれも黒潮町こまじり浜、溝渕幸三さん提供)

 5月下旬の夜間、幡多郡黒潮町の砂浜で産卵を終えたアカウミガメが、遠く離れた陸側の照明に引き寄せられた。そのまま引き返せばすぐ波打ち際だが、視界に入った照明を目指した結果、大きく遠回りして海に帰った。その卵からふ化した約100匹の子ガメも、同じ照明に惑わされた。暗闇の中、人工照明を「海の方向」と取り違えて進む習性が原因。浜に残された足跡が物語っていた。

 アカウミガメの上陸やふ化は通常、夜間。黒潮町の「こまじり浜」で母ガメ上陸の痕跡が確認されたのは、5月27日早朝。産卵後の足跡は、約50メートル離れた、陸側の小さな照明に向かっていた(写真1)。
(写真2)砂から出た約100匹の子ガメが海に向かう途中、一斉に照明へと進路転換

(写真2)砂から出た約100匹の子ガメが海に向かう途中、一斉に照明へと進路転換


 産卵場所から波打ち際まで、わずか20メートルほど。卵が波にさらわれないよう住民が掘り出し、少し離れた小高い場所に埋め直した。

 128個の卵は今月3日未明、大半がふ化。子ガメたちの足跡は、いったん海に向かったものの、途中で一斉に右折して、前述の照明に向かっていた(写真2)。

(写真3)子ガメの右折地点から照明の方向を望む

(写真3)子ガメの右折地点から照明の方向を望む

 子ガメが右折した理由は夜間、現地を訪れると容易に理解できる。はい出た場所(卵の移設先)からは、樹木にさえぎられて照明が見えない。右折地点から、照明が視界に入ってくる(写真3)。

 写真はいずれも、保護に取り組む溝渕幸三さん(75)=四万十市不破=が撮影した。

 四国水族館(香川県)館長で日本ウミガメ協議会(大阪府)会長も務める松沢慶将さん(53)によると、夜の砂浜でのウミガメは、視界の中で最も明るい方向を目指すことで海に到達する。ただ人工照明がある状況では、よく照明に誘引される。

 「海に向かうはずの母ガメと子ガメを、照明が迷わせた。そのことを分かりやすく示す写真だ」

 溝渕さんによると浜辺の自販機の照明が、ウミガメを引き寄せる事例もある。

 住民の暮らしもあるので、上陸がまれな浜の、小さな明かりを問題視するつもりはないという。ただ打ち上げ花火や車、バイクなど騒々しい光は影響が大きいとして「産卵・ふ化期である5月~9月上旬は、ぜひ配慮を」と呼び掛けている。(福田仁)

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