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2022.08.20 08:35

よさこいに揺れた街、心―[音土景] 音感じる土佐の風景(20)

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 真夏の太陽が照り付ける高知市の追手筋に、鳴子を手にした人々が踊り込んできた。地方車のスピーカーが太鼓やかねの音を増幅し、足元の道路まで震わせているかのよう。色とりどりの衣装をまとった踊り子たちが、ざわめく街を華やかに彩る。

 10、11の両日開催された「2022よさこい鳴子踊り特別演舞」。お城下で3年ぶりに、よさこいの景色が広がった。

 「そうそう、この感じ。この2年さびしかった。忘れてなかった」。踊り子の女性(74)がほほ笑み、小学5年の男の子は「うれしすぎて楽しすぎて。何て言っていいか」と汗をぬぐった。

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 日本で新型コロナウイルス禍が始まった2020年、よさこい祭りは67年の歴史で初の中止になった。21年も開けず、コロナ禍も3年目の今年。運営のノウハウやチームのモチベーションを保つことへの危機感が強まり、衣装作りを手掛ける県内の縫製工場から廃業も出た。「今年ないと、もうようやらん」の声があちこちから上がっていた。

 県や市の後押しもあり、よさこいの火を「未来へつなぐ」ための特別演舞の開催が決まった。

 ただ本番が近づくにつれ、感染者は過去最多を更新するように。感染「第7波」の高波に襲われる中での開催に、医療従事者は「迷惑だ」と憤り、よさこいファンも「もとからアンチの多い祭り。開催したら市民の心が離れてしまう」と懸念した。

 踊り子も「この状況で参加していいのか」と悩み、開幕直前に出場を辞退するチームが続いた。正解が分からない問いを前に、多くの人の心が揺れた。 

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 8月10日。19年の約半分の96チーム、約3分の1の踊り子6600人が、例年より4少ない12会場に乗り込んだ。電車通りを行き交う地方車はまばらで、3年前の「街中が祭り」という状態にはほど遠かった。

 それでも会場では、子どもからお年寄りまでが元気いっぱいの踊りを見せた。初めての流し踊りに戸惑いながら、初々しく鳴子を鳴らす大学生もいた。沿道で無数のうちわが振られ、踊り子に風を送った。主催団体の事務局員は「止まっていた時が、動き出した感じがする」。泣き笑いの顔だった。

 新型コロナ禍で、街と人々の心を震わせた2日間のよさこい。来年は70回目を迎える。(写真・佐藤邦昭、文・竹内悠理菜)

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