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2022.08.11 05:00

【岸田改造内閣】課題としっかり向き合え

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 挙党態勢の構築を重視して各方面に配慮したようだ。岸田文雄首相は内閣改造・自民党役員人事を行った。政権基盤の安定を通して政策課題と向き合えるかが問われる。
 参院選で自民は改選過半数を単独で確保した。参院選を乗り切ったことで、首相は大きな国政選挙がない「黄金の3年間」を手に入れた。長期政権を見据える状況だが、選挙後の内閣支持率は大きく下落し、発足以来最低となっている。
 新型コロナウイルス感染は流行「第7波」で感染者が急増して、医療は逼迫(ひっぱく)の度合いを強めている。物価は高騰し、景気後退が懸念される。安倍晋三元首相の国葬への反発も強い。また、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民議員の関係が次々と発覚している。
 首相は当初、改造は9月前半に実施する方向で調整していたが、1カ月ほど前倒しすることになった。秋の臨時国会へ向けて態勢を整えるという理由付けもできるが、体制を一新して、逆風が強まらないようにするのが狙いだろう。党内最大派閥の領袖(りょうしゅう)だった安倍氏の死去に伴う党内力学の変化をにらみ、人選の主導権を握る思惑もあったはずだ。
 第4派閥会長の首相の権力基盤は強固とは言えない。第2、第3派閥への支援の期待は、領袖の茂木敏充幹事長、麻生太郎副総裁の留任に見て取ることができる。
 党内保守派の離反も警戒する。安倍氏との調整で保守派の反発を抑え込めたが、難しくなってしまった。安倍氏側近だった萩生田光一氏の政調会長起用は、最大派閥を重視する姿勢とともに、保守派と向き合うことへの期待が込められる。
 党四役にはほかに非主流派を配置するなど、配慮とともに党内基盤を強めたい意図がうかがえる。留任や再登板が多く、堅実さとしたたかさを感じさせもする。
 首相は内閣改造・党役員人事を巡り、旧統一教会との関係を点検し、適正に見直すように指示した。それにどう向き合ったのか、閣僚らの姿勢が注視されることになる。
 課題は山積している。物価高対策の大型補正予算編成が迫られる。新型コロナは感染予防と経済社会活動をどう整合させるのか、議論を深めていく必要がある。
 台湾情勢は緊迫化し、中国、ロシアによる日本周辺での軍事活動も活発化している。防衛力の抜本強化へ向け、首相は防衛費の「相当な増額」を表明している。これらは国民の関心が高い事案であり、説明と理解が基本だ。
 しかし、先の臨時国会では、安倍氏の国葬や、旧統一教会と政界の関係を巡る議論は行われず、本格論戦は先送りされた。国会軽視の姿勢は認められない。「桜を見る会」や森友、加計学園、日本学術会議を巡る問題など「負の遺産」への対応もこれまで十分ではなかった。
 首相が掲げる「信頼と共感」の政治をどう実現するか。野党もまた存在意義に関わる局面にある。両者がしっかりと向き合うことだ。

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