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2022.08.06 08:00

【原爆の日】不戦の祈り核軍縮の力に

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 今月1日、米ニューヨークで開幕した核拡散防止条約(NPT)再検討会議の冒頭、国連のグテレス事務総長は「人類は広島と長崎の恐ろしい炎から得た教訓を忘れつつある」と危機感をあらわにした。
 一瞬にして地獄絵図と化した惨禍から77年、「核なき世界」を祈り続けた被爆地には、衝撃的だったかもしれない。だが、幾重にも分断が横たわる国際社会の現状に、その危うさを認めざるを得ないだろう。
 2015年の前回会議は、NPT体制下で特権を有する核保有国と、核軍縮の停滞にいらだちを募らせた非核保有国が対立。核リスク低減の具体策を盛り込む最終文書を採択できなかった。
 今回も交渉が決裂してしまうと、保有五大国を縛る唯一の国際的な枠組みが形骸化しかねない。その瀬戸際にあって、交渉環境は前回会議よりも一層困難になっているのは間違いない。
 非保有国が主導する形で、核兵器を全面的に違法化する核兵器禁止条約が昨年1月に発効、ことし6月には初の締約国会議も開かれた。核廃絶への機運が盛り上がりをみせる一方、保有国側は条約の動きに反発を強めている。
 さらに、ロシアはウクライナ侵攻に伴って核兵器使用をちらつかせ、台湾海峡では米中間の緊張が急速に高まっている。保有国間の分断はもはや覆い隠せず、1970年のNPT発効以来、「最悪の国際情勢」とささやかれる状況にある。
 そうした中、日本には本来、唯一の戦争被爆国として存在感を発揮し、分断の橋渡しを担う役割が求められよう。岸田文雄首相は日本のトップとして初めて再検討会議に出席した。意欲は評価できるものの、その演説が各国の共感を得られたかは心もとない。
 政府は、核禁条約締約国会議へのオブザーバー参加を拒み、岸田首相は演説でもその流れに触れることを避けた。日本に「核の傘」の抑止力を提供する米国などに配慮したのだろうが、ここにも政府の姿勢と、被爆者をはじめとする世論との分断が見て取れる。
 厳しさを増す安全保障環境を反映し、直近の世論調査では日本が戦争に巻き込まれる可能性を48%の人が指摘している。それでも、核禁条約に参加すべきだとする声は61%、国是である非核三原則を「堅持するべき」との回答は75%に達した。核廃絶の願いが、国民にどれだけ浸透しているかを示していよう。
 政府の姿勢は、長年にわたって核廃絶を訴えてきた多くの被爆者らを落胆させてきたが、核禁条約を主導した非保有国の失望も招いたのではないか。核兵器の非人道性を知る国として、立ち位置を見つめ直す必要がある。
 核兵器の廃絶に近づけるか、脅威が続くのか。世界がその岐路に立つ中、広島はきょう、原爆の日を迎えた。9日の長崎原爆忌、15日の終戦の日へと続く鎮魂と不戦の祈りを、核軍縮の力につなげたい。

高知のニュース 社説

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