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2022.08.04 08:00

【最賃大幅上げ】中小企業の支援不可欠

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 2022年度の最低賃金(最賃)は、全国平均で31円引き上げ、時給961円とする目安額が決まった。過去最大の上げ幅だった21年度の28円をさらに3円上回り、引き上げ率は3・3%となる。
 新型コロナウイルス禍からの経済回復、ロシアのウクライナ侵攻、急激な円安などで国内の物価高は顕著だ。消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率は、3カ月連続で2%を超える状況が続いている。
 今後も多くの商品の値上げが見込まれている。最賃付近で働く層ほど受ける影響は大きい。賃上げが不可欠な局面であり、過去最大の目安額は妥当と言えるのではないか。
 賃上げの必要性は、足元の物価高だけに起因するものでもない。日本の実質賃金は長らく伸びていない。一方、企業の内部留保は最高水準にある。利益を賃金に回し、消費を増やす経済の好循環が求められており、最賃上げはそれにかなう。
 日本の最賃は先進国の中でも低水準だ。政府は「全国平均千円以上の早期実現」を掲げている。企業の体力づくりも含めて、環境を整えていく必要がある。
 目安額を決める中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の協議は例年、7月中に決着していたが、今回は8月にずれ込む異例の展開となった。
 労使双方の委員の主張に開きがあったほか、菅政権主導で「大幅賃上げありき」となった昨年の反省から、今回は客観データに基づいて丁寧な議論を重ねたという。双方の歩み寄りや納得を重視したプロセスは評価できよう。
 ただ今回の目安額に対し、主要経済団体からは「厳しい結果」との評価も相次ぐ。企業の負担増が、極端な経営悪化や雇用の縮小などを招いてはいけない。とりわけ、経営基盤の弱い中小への配慮が不可欠だ。
 政府は、税制優遇や助成制度を通じて賃上げを政策誘導しているが、より実効性のある取り組みを追求していく必要がある。経営基盤そのものを強化する生産性、収益力アップに向けた支援も重みを増す。
 企業側も原材料費など物価高騰に苦しんでいる。増加コストを転嫁できるよう、交渉力の弱い中小企業が発注元などと適正に取引できる環境づくりも重要だ。
 賃金の地域間格差を解消する課題は、残ったままとなった。
 最賃は中央審の目安額を基に、都道府県ごとに審議会を開いて決定する。目安額は、地域の経済情勢に応じてAからDの4ランクに分けられ、Aランク31円に対し、高知県などDランクは30円上げとされた。
 地方審の協議はこれからで流動的な要素はあるが、目安通りなら、最も高い東京(1072円)と、最も低い高知、沖縄(850円)との差は221円から222円に広がる。
 賃金格差は地方の人口流出、全国一極集中も生んでいる。格差が広がることを前提にした決定の仕組みはいかがなものか。新しい手法の議論に着手するべきだ。

高知のニュース 社説

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