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2022.07.29 08:00

【ミャンマー】孤立を深める国軍の蛮行

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 不透明な裁判に基づく死刑執行だ。強く非難する。軍政による民主派への弾圧強化を印象付ける蛮行であり、国際社会からの孤立は一層進む。暴力の即時停止を求める。
 ミャンマーで政治犯とされた4人の死刑が執行された。民主化指導者アウンサンスーチー氏が率いた国民民主連合(NLD)の元議員や、民主活動家らだ。
 国軍が設置した軍事法廷が「テロ行為」に関わった罪で死刑判決を言い渡していた。民主派による挙国一致政府(NUG)と接触し、資金集めや武器を提供したとされる。
 日米韓など8カ国と欧州連合(EU)の外相は非難声明を発表し、人権と法の支配軽視を批判した。軍政への圧力強化の動きも出ている。
 国軍は昨年2月のクーデターで全権を掌握した。NLDは前年の総選挙で国軍の政治的影響力を保証する憲法の改正を掲げ、単独過半数を獲得していた。国軍は大規模不正があったとして、第2次政権の発足を前に阻止へと動いた。
 民政移管から10年足らずでの軍政復活に国民の反発や失望は大きく、反軍政デモは全国に広がった。治安当局は強制排除に乗り出し、人権団体によると、これまでに武力弾圧で2千人以上が死亡している。
 国軍は来年8月までに総選挙を実施するとしている。親国軍派の政権樹立をもくろみ、NLD幹部らの徹底排除を図っている。
 スーチー氏は汚職や国家機密漏えいなどで訴追された。社会不安をあおった罪などで禁錮計10年を超える判決が既に言い渡され、刑務所に収監された。
 人権団体のまとめでは、クーデター後の死刑判決は100人を上回る。裁判所は国軍の統制下にあり、公判は非公開で行われている。裁判の公正さに疑念が拭えない。それだけに執行を急いではならない。
 こうした動きの中、民主派の一部には武装闘争に転じる動きがあり、地方を中心にゲリラ戦を仕掛けている。一方、親国軍派は暗殺集団を発足させ、国軍関係者を襲撃する民主派への報復を繰り返している。国内の分断が深まっている。
 国軍のミンアウンフライン総司令官は、制裁を科す米欧や民主化勢力との対決姿勢を崩さない。東南アジア諸国連合(ASEAN)による調停も機能していない。暴力停止をはじめとする5項目で合意しているが、国軍は完全には履行していない。特使の受け入れには応じているものの、状況は改善しないままだ。一方でロシアとは軍事を含め協力を強化している。
 国軍が計画する総選挙はそもそも正当性が問われるが、実施するには政治的な対話ができる環境をつくることが不可欠だ。まずは混乱を収拾させる必要がある。
 日本は実態が不明な中国を除いてミャンマーの最大支援国で、国軍との独自のパイプもあるとされた。しかし、それが機能しているようには見えない。進展へ向けて一段の外交努力が求められる。

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