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2022.07.26 08:00

【五輪元理事疑惑】利権構造の真相究明を

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 世界中から集ったトップアスリートの躍動から1年。大会の運営を担った東京五輪・パラリンピック組織委員会の在り方に、改めて焦点が当たっている。
 組織委の高橋治之元理事の会社が、大会スポンサーだった紳士服大手のAOKIホールディングス側から総額約4500万円に上る資金を受け取っていたことが判明した。東京地検特捜部が資金の流れなどを詳しく調べている。
 組織委の役員や職員は特別措置法で「みなし公務員」とされ、職務に関して賄賂を受け取れば収賄罪に当たる可能性がある。組織委は6月末で解散し、清算段階に入っているが、真相の究明なくして全てを幕引きとはならない。
 高橋氏は広告大手、電通の元専務で長年、スポーツ事業を担当していた。代表を務めるコンサルタント会社「コモンズ」は、AOKI側とのコンサル契約を2017年9月に結んでいる。
 AOKIは契約の約1年後に、オフィシャルサポーター契約を締結したと発表。日本選手団が開会式などの式典で着用した公式服などを製作したほか、19年夏に大会エンブレム付きのスーツなどを一般向けに発売して、3万着以上を売り上げた。
 注目されるのは、組織委内での高橋氏の「影響力」だろう。
 組織委の清算法人によると、高橋氏が専務だった電通は組織委と「専任代理店契約」を結び、スポンサー募集に大きく関わっていた。さらにスポンサーの選定やライセンス商品の審査を担当した組織委「マーケティング局」にも、電通からの出向者が多数在籍していた。
 高橋氏は、AOKI側とのコンサル契約は経営全体や新規事業の提案が業務内容と説明し、組織委との関係を否定している。
 一方で、特捜部の任意聴取を受けたAOKIの青木拡憲前会長は「高橋さんの人としての力に期待した」と供述。具体的業務内容について、青木氏の部下は「ライセンス商品販売」への協力を求めたいとのメールを青木氏に送っていたという。
 高橋氏はスポンサー選定や商品審査の手続きに直接関与する立場ではなかったが、その判断や審査期間などに関して、具体的な働き掛けがなかったかどうか。電通出向者ら関係者の認識を含め、事実関係を明確にする必要があろう。
 東京五輪・パラリンピックは準備段階から新型コロナウイルス流行をはじめとするトラブルに翻弄(ほんろう)されたといってよい。
 なかでも、招致を巡る贈収賄疑惑で、日本オリンピック委員会(JOC)会長だった竹田恒和氏がフランス司法当局の捜査対象となり、国際的な信用は大きく傷ついた。その後も実態の解明は進まず、うやむやのままになっている。
 国内では、札幌市が30年冬季五輪の招致活動を進めている。利権の絡む巨大ビジネスの側面を持つ五輪とどう向き合うべきか。国民は判断材料を求めている。

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