2022.08.24 05:00
「植物の名前を知りたいのだ」シン・マキノ伝【7】 田中純子(牧野記念庭園学芸員)
高知県立牧野植物園に「植学啓原 訳文」という写本がある。この写本について、牧野は自叙伝でこう語っている。親友の堀見克礼の父は医者であって、家に「植学啓原」という宇田川榕庵によるオランダの本の翻訳書があった。これは、西洋の植物学を解説したもので、リンネの分類や植物学の述語を習得できた。この本は漢文で書かれていたので、自分が和文に訳したとある。
堀見克礼(1867~1932年)は、前回の「重訂本草綱目啓蒙」のエピソードで登場した人物である。同じ佐川の生まれで、牧野よりは年少である。大阪医学校を卒業して大阪医科大学教授となり、大阪市で堀見病院を開業した。後に神戸に滞在することが多くなった牧野は、大阪の堀見を訪ね、診療を受けたこともある。
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