2022.07.22 08:00
【韓国外相の来日】融和の好機逃さぬように
表向きは安倍晋三元首相の死去に対し、弔意を伝えるための訪日としたが、5月に韓国大統領に就任した尹錫悦(ユンソンニョル)氏は日韓関係の改善に意欲を示している。今回の朴外相派遣もその一環と見ていい。
日本政府には依然、韓国側への不信感が根強いが、融和を図る好機が訪れているのは間違いない。双方がそれを逃さず、未来志向で対話を重ねたい。
日韓関係は、韓国の文在寅(ムンジェイン)・前政権が元慰安婦を巡る日韓合意をほごにして以降、急速に悪化した。元徴用工が日本企業に損害賠償を求めた訴訟も拍車をかけた。
元徴用工問題では、日本側は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場を取る。ところが、韓国の裁判所は賠償を命じ、差し押さえられた日本企業の資産が現金化される恐れが高まっている。
対立は輸出規制や軍事情報共有の見直し論も引き起こし、経済や安全保障にまで影響を及ぼしている。中国やロシア、北朝鮮が国際秩序を脅かそうとしている中、日韓が仲たがいしていては東アジアの安定は望めなくなる。
関係改善が必要である点では日韓とも一致している。岸田首相も「放置できない」問題とする。来日した朴外相は、日本企業の資産が現金化される前に解決策が出せるよう努力する考えを表明した。
ただ、岸田首相も林外相も表情は硬かった。韓国側の本気度を推し量っている面がある。疑ってばかりでは改善は図れないが、その原因が韓国側にあることは尹政権も認識しなければならない。
元慰安婦問題を巡る日韓合意のほごは、信頼関係を大きく損ねた。岸田首相がかつて外相として直接関わった案件でもある。韓国には過去、支持率アップを狙って「反日」政策を掲げた政権もあった。
同じことが繰り返されてはならない。尹政権は元徴用工問題も打開策を韓国内でしっかりと論議して日本との対話に臨んでほしい。
同時に日本側も常に謙虚な姿勢が求められる。苦痛を与えてきた歴史は決して消せない。韓国が経済成長し、国際的に影響力のある国にもなっている。
岸田首相と尹大統領は6月、スペインで開かれた北大西洋条約機構(NATO)の会合に出席。日米韓3カ国の首脳会談は実現したが、日韓の首脳会談は韓国側から打診があったものの見送られた。
日韓首脳会談は2年半以上開かれていない。両国は経済面や文化面などで民間レベルでは深い交流が続いている。コロナ禍でもそれは絶えなかった。それに比べ、外交の冷え込みは異常である。
隣国であり、安全保障の面でもつながりは深い。朴外相の訪日を次の対話へとつながなければならない。早期のトップ会談も実現したい。