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2022.07.20 08:00

【G20声明見送り】危機打開への道を探れ

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 ロシアのウクライナ侵攻を巡る対立の深さを再び見せつけた。物価高騰や食料不足への対応は待ったなしの状況だ。広範囲の枠組みで危機回避への道筋を描く必要がある。
 日米欧の先進国と新興国による20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議は、共同声明を見送った。4月の前回大会も採択できなかった。分断が続いている。
 物価高を背景に世界経済は減速の懸念が強まる。しかし、国連での各国対応を見ても国際社会は一枚岩になってはいないように、G20もその構図を反映した。利害調整の難しさが浮き彫りになった。
 先進7カ国(G7)側は、世界経済の減速はロシアの侵攻で市場や物流が混乱し、食料やエネルギー価格が高騰したためだと訴える。これに対しロシアは、欧米によるロシアへの制裁が経済を悪化させたとの姿勢を貫く。両者の主張の対立はこれまでと変わってはいない。
 さらに新興国には、ウクライナ侵攻と対ロ制裁の両方を問題視する意識があるようだ。原油高への危機対応でも、産油国と消費国の間で温度差がある。各国がそれぞれの立場からの発言を強めている。協調した対応はそもそも難しいが、分断が拡大していないか気になる。
 議長国インドネシアは、食料不安やエネルギー、インフレの協議は続ける必要があるとの認識で各国が一致したと説明する。機能不全を長期化させない対応が求められる。
 こうした中、危機対応のために基本姿勢の修正や、結束に関わりかねない動きが出ている。バイデン米大統領は人権問題で対立するサウジアラビアを訪ね、実権を握るムハンマド皇太子と初会談した。原油増産を促してエネルギー価格を抑制する狙いだ。だが増産の確約は得られず、思惑は空回りの様相だ。中間選挙にも影響しかねない。
 日本政府は、ロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の権益維持を目指す方針を固めたという。だがロシア側は経済制裁への報復とみられる対応をとるため、権益維持の実現は判然としない。さらに日本の対応を各国がどう受け止めるかを注視する必要がある。
 欧州では賃上げを求めるストライキが頻発している。供給不安から燃料代が跳ね上がり、市民生活を直撃している。エネルギーにとどまらず、穀物価格の高騰は途上国の一部に食料危機が懸念される。
 為替レートの過度な変動も景気への悪影響が警戒される。米国では高インフレ継続の心理が強まり、急速な金融引き締めを行っている。これを受けて世界的なドル買いの流れに拍車がかかっている。
 日本は大規模な金融緩和策を維持し、当面は継続との見方が強い。金利差拡大による円安が進み、輸入物価を押し上げる。国内企業はコスト増で収益を圧迫されている。
 世界経済は多くの課題を抱える。G20は結束して取り組めなければ存在意義にも関わる。分断を修復して危機の打開を探ることが必要だ。

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