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2022.07.14 05:00

【要人の警護態勢】街頭活動の安全守れ

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 安倍晋三元首相が街頭演説中に銃撃されて死亡した事件で、警察庁は、警護に関する「検証・見直しチーム」を立ち上げた。
 要人警護業務は、「守って当然」「結果が全て」とされる。今回、民主主義を揺るがす凶行を許した警察当局の責任は計り知れない。事件は今後の政治活動の在り方にも影響もしてこよう。なぜ防ぐことができなかったのか。問題点を検証し、再発防止につなげるのは当然だ。
 事件は、奈良県内で演説中の安倍氏に、山上徹也容疑者が背後から近づき、手製の銃を2回発砲して、2発目の弾丸が安倍氏に命中した。
 この時の警備を巡っては、「手薄だったのではないか」との指摘がある態勢とともに、いくつかの点が問題視されている。安倍氏の演説場所の背後が開けていたこと、容疑者が車道に出てきた時点で警備が声をかけなかったこと、銃声が聞こえたら要人に覆いかぶさる警備の原則が実行されなかったこと、などだ。
 現場では、警視庁のSP(警護官)と奈良県警の警察官が警戒していた。警護計画の詳細は警察庁に報告されてなかった。検証チームは、制服・私服警察官の人数や配置といった態勢のほか、警察庁の関与の在り方、担当者の犯行当時の対処などを調べるとしている。
 警察側は当時の詳細な態勢を明らかにしていないが、警察庁、奈良県警ともに、問題があったことは認めている。調査は、警察庁次長をトップに内部で進めるという。衝撃の大きさから「警察史上最大の痛恨事」ともされる事件でもあり、警察にありがちな身内に甘い内容とならないよう求める。
 「今後の警備に支障が出る」などと理由をつけ、都合の悪い調査結果や見直し案の公表を控えることがあってはならない。国民にきちんと説明責任を果たすべきだ。
 今回の事件を、2019年の参院選の際、札幌市で演説中だった安倍首相(当時)にやじを飛ばした男女が警察官に排除された件と関連づける見方が一部に出ている。
 札幌地裁は今年3月の判決で、警察官の排除行為を「表現の自由を侵害する」として違法とした。これが安倍氏の警備の手薄さにつながったとの論法だ。しかし、言論による意見表明と暴力は全くの別物である。関連づけるのは筋違いだ。
 懸念するのは、今回の凶行を受けて、街頭での政治活動が減っていくことだ。政治家と不特定多数の有権者が直接つながる貴重な機会であり、熱気や息遣いなども含めて、その現場は「政治」「民主主義」そのものである。
 警護の見直しでは、要人の安全をより重視する方向になるだろう。だがそれによって、街頭活動が取りやめになったり、過剰な警備で政治家と有権者の距離が開きすぎることは互いに本意ではあるまい。
 見直しは、街頭活動を否定するのではなく、「どうすれば安全に続けられるか」との観点で検討を進めてもらいたい。

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