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2022.07.12 08:00

【参院選を終えて】合意形成で分断の回避を

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 参院選は自民党が大勝した。岸田政権の約9カ月に、有権者は信任の意思を示したと受け止められる。
 この間の岸田文雄首相の政権運営は安全運転とも例えられた。論争や対立を避ける姿勢に徹してきたためだ。それが物足りなさや看板政策の分かりにくさの指摘にもつながったが、さほど批判的にはとらえられなかったと見ることができる。
 国政選挙は当面ない環境ができあがった。それを狙って岸田色を抑えてきたとも言えるが、言うまでもなく無条件での信任ではない。ここぞとばかりに力でねじ伏せようとしては混乱を招く。首相の政治姿勢からはそんな手法に転じるとは想像しにくいが、抑制的な対応が議論の環境をつくっていく。
 一方で、政権が独自の政策を推進し、成果を求められる時期を迎えているのは間違いない。大切なのは合意の形成だ。その手だてを怠るようでは分断を深めてしまう。
 国の針路に関わるテーマは特にそうした傾向が強まりかねない。憲法改正に前向きな「改憲勢力」は国会発議に必要な総議員の3分の2を上回った。ただ、個別の論点では各党の考え方が一致してはいない。このため首相は国会の議論を深め、発議できる案をまとめると述べている。批判的な勢力を含め、やはり議論を重ねていくことが重要となる。
 安全保障環境も激変した。ロシアはウクライナに侵攻した。覇権主義的な姿勢を強める中国や、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮との向き合い方が問われている。
 首相は防衛費の相当な増額を表明した。自民党は国内総生産(GDP)比2%も念頭に、5年以内に防衛力の強化に必要な予算水準を目指す。敵基地攻撃能力を言い換えた「反撃能力」の保有ももくろむ。
 外交・安全保障施策の長期指針「国家安全保障戦略」などが年内に改定される。防衛力増強は軍事大国化への懸念を強める。財源も無制限ではない。検討課題は多く、前のめりは排除しなければならない。
 暮らしに直結する物価高騰や、新型コロナウイルス対策にも万全を期す必要がある。
 新型コロナ感染者数が増加傾向を示している。感染抑止や医療提供などの対策が追いつかなかった過去の反省点を生かし、実効性のある対策を進めていきたい。経済活動との両立も課題だ。重症化リスクなどを見極めながらの判断が重要になる。欠かせないのは説明と理解だ。
 野党は共闘体制が築けず後退が目立った。改選1人区は自民が野党を圧倒した。立て直しが急務だ。
 選挙期間中に安倍晋三元首相が凶弾に倒れた。民主主義の根幹に関わる許しがたい蛮行であり、繰り返されることがあってはならない。
 全国の投票率は前回を上回ったが、半数近くが棄権している。こうした状況を変えるには、政治の緊張感が不可欠であり、「政治とカネ」問題に真摯(しんし)に向き合うことが必要だ。政府の姿勢はもとより野党の存在意義も試される。

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