2022.07.07 08:00
【2022参院選 エネルギー政策】問われる日本の姿勢
一つはウクライナ危機に端を発したエネルギー安全保障や燃料高騰。もう一つは温暖化防止のため、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しない脱炭素社会の実現である。
東京電力福島第1原発事故を経験した日本にはさらに、原子力利用をどうするのかという課題も突き付けられている。これら三つはつながり合ってもいる。
日本の姿勢がいまほど問われている時はあるまい。参院選でも外せないテーマである。
国民生活や経済活動にとって、エネルギーの安定的な確保と供給は欠かせない。一方で、日本や欧州など多くの国が化石燃料を外国に依存している現実がある。
その調達先の一つがロシアであり、ウクライナ危機はエネルギー安保やエネルギー自給の重要性を改めて問うこととなった。
切り札の一つはやはり、太陽光や風力、水力などの再生可能エネルギー(再エネ)だろう。主に脱炭素の取り組みとして注目されてきたが、今後はエネルギー安保などの観点からも拡大が求められそうだ。
資源エネルギー庁によると、日本の発電電力量に占める再エネ比率は2019年度実績で18・0%。同じ先進7カ国(G7)のカナダ66・3%、イタリア39・7%、ドイツ35・3%、英国33・5%に比べると見劣りは否めない。
日本は温室効果ガス排出量の多い石炭火力の比率が高く、19年度実績では31・9%を占めた。国際社会の日本を見る目が厳しくなっているのも当然である。
政府は昨年改定したエネルギー基本計画で、30年度の電源比率目標として再エネ36~38%を掲げた。19年度実績の2倍以上に当たるが、実現への政策は見えにくい。ウクライナ危機前の計画でもある。
19年度6・2%だった原発の30年度目標は20~22%。「運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もない」とした。
原発は福島第1原発事故の後、新規制基準が導入された。地震や火山の多い日本ではそれでも「絶対に安全だ」と言えない。改修や維持には巨額の費用もかかる。
岸田文雄首相は燃料高騰を踏まえ原発再稼働を積極的に進める意向を示しているが、政府は一昨年、50年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を打ち出した。それに向け原発も生かしたい考えだ。
エネルギー計画は石炭火力も「安定供給性や経済性に優れ」ているとして、30年度に比率19%を維持する方向だ。世界の流れと逆行すると言わざるを得ない。
選挙戦のさなか、全国を対象にした節電期間が始まった。エネルギー問題は猛暑による電力逼迫(ひっぱく)でも身近になっている。どんな政策を取るべきなのか、有権者にも投げ掛けられている。