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2022.07.06 05:00

【KDDI障害】情報インフラの弱さ露呈

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 通信大手KDDI(au)で発生したトラブルは、通話やデータ通信などが回復するまでに60時間以上を要し、同社の総契約数の約6割にあたる最大3915万回線に支障が出た。利用者への影響は過去最大規模となった。
 障害は物流や決済、消防への通報など広範囲に及んだ。社会生活における通信インフラの重要性と同時に、そのもろさを露呈した格好だ。障害発生の情報周知も後手に回った印象が拭えず、社会的な責任が厳しく問われよう。
 KDDIによると、障害は2日未明に発生。定期的な点検・メンテナンスで、音声通話に関わる「ルーター」という機器を交換した際に不具合が生じた。これをきっかけに、音声をデータに変換する「交換機」にアクセスが集中するなどして連鎖的にトラブルが拡大したという。auに加え、KDDIの通信回線を利用する他社ブランドの回線にも影響が広がった。
 データ通信や音声通話は4日午後までにほぼ回復したが、「完全復旧」の判断は5日夕に持ち越さざるを得なかった。いつでも、どこでも通信できる便利さは、障害発生時の影響の大きさと表裏の関係といえる。警察や消防局に通報できないといった、生命に関わりかねない事態を招いたことは看過できない。
 携帯電話だけではない。通信網は多様な機器を通信でつなぐモノのインターネット(IoT)で、さまざまなサービス基盤になっている。物流会社の管理システムや銀行のATM、気象庁の地域気象観測システム(アメダス)など国民生活に広く支障が出た。
 高い社会性を有するにもかかわらず、なぜ定期的なメンテナンスがこれほどの大規模なトラブルにつながってしまったのか。復旧作業に長時間を要したことからも、インフラを担う企業としての認識、想定に甘さがあったことは否めないだろう。トラブル後の対応の鈍さにもそれが表れている。
 トラブルからまもなく、ホームページ上に障害の情報を掲載したものの十分に更新されず、コールセンターや販売店に問い合わせが殺到した。高橋誠社長が記者会見を開いたのも発生後、丸1日以上たってからだった。その場で補償を検討する考えを示したとはいえ、具体的な方針は示されなかった。利用者本位の対応とは言いがたい。
 KDDIは2015年にも電子メールが送受信できなくなるトラブルがあり、最大800万件近くの契約者に影響が出た。近年、同業のNTTドコモやソフトバンクで通信障害が発生した際、総務省は事故情報を業界で共有して再発防止に取り組むよう求めていたが、社内外の教訓がどれだけ生かされたのか。
 日本はデジタル化の遅れが指摘され、政府はその推進を重点施策に挙げている。基盤となる通信網の重要性が今後ますます高まっていくのは間違いない。再発防止に向け、徹底した検証が求められる。

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