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2022.07.05 08:00

【繁藤災害50年】風化を防ぎ教訓つなごう

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 50年前のきょう、香美市土佐山田町繁藤で、集中豪雨による土砂崩れが発生し、60人が犠牲になった。本県の災害史に残る繁藤災害から半世紀。あの痛ましい出来事を、大雨や水害から命を守るための教訓として改めて胸に刻みたい。
 1972年7月5日、繁藤地区では複数回にわたり山崩れが起こり、住民1人が巻き込まれた。午前10時55分、国道32号の北側にある追廻山(おいまわしやま)の斜面が崩壊。救出作業中だった消防や住民らを襲った。その中には、現場を取材中だった本紙記者も含まれる。
 地球温暖化に伴う気候変動で、今まで経験したことのないような雨の降り方が各地で見られだした。毎年どこかで深刻な被害が生じている。それだけに、繁藤の教訓は大きな意味を持ち続ける。
 一方で、遺族らの高齢化が進む。地元で毎年行われる慰霊祭も、規模縮小が取りざたされている。風化を防ぎ、どう未来につなぐか。私たちに投げかけられた課題だろう。
 土砂災害対策を巡っては近年、状況調査が進み、住民も情報にアクセスしやすくなっている。その基盤を十分に生かしていきたい。
 対策が進むきっかけになったのは、2014年8月の広島市の土砂災害だ。未明の記録的な豪雨で土石流や崖崩れが多発し、77人が亡くなった。市の初期対応が問題視されたほか、土砂災害の恐れがある「警戒区域」の指定作業について、広島県の遅れが指摘された。
 この災害を受け、危険性がある箇所の調査の加速や、住民への周知推進などを目的とした改正土砂災害防止法が翌年1月、施行された。
 高知県では、危険箇所を冊子にして全戸配布するとともに、対象地区の調査を進め、21年度末でその作業を完了した。「警戒区域」約2万カ所、著しい危険の恐れがあり開発も制約される「特別警戒区域」1万8500カ所余りを指定した。
 一通り指定を終えたのは前進だが、それは生かさないと意味がない。昨日で発生1年になった静岡県熱海市の土石流災害は、現場が警戒区域だったにもかかわらず、結果的に大惨事になった。継続的な取り組みが求められるということだ。
 県民には、自分の居住地の危険度を知ることが第一歩だろう。情報はインターネットの「高知県防災マップ」サイトに反映されている。事前に確認しておきたい。
 行政側は、要配慮者のいる施設などには直接、危険度を周知もしているというが、一般向けにどう広く啓発していくかが重要になる。
 調査結果は、土砂災害警戒情報や避難指示などを出す時の判断材料にもなる。雨の分析と併せ、効果的な注意喚起や指示ができるよう、研さんに努めなければいけない。
 本県はことし、統計上最速の6月末に梅雨明けしたが、きょう遅くには台風4号が最接近する見込みだ。雨の降り方は予断を許さない。繁藤災害を忘れないことが、雨に対処する緊張感につながる。

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