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2022.07.04 08:00

【2022参院選 社会保障】中長期の見通し示せ

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 少子高齢化が加速している。高齢人口はピークと推計される2040年に向けて着々と増え、25年には団塊世代が全員75歳以上となる。一方で、21年の出生数は過去最低を記録し、上向く見通しはない。
 人口構造が変わる中、年金、医療、介護などの社会保障制度は再構築を迫られている。給付と負担の在り方の見直しは喫緊の課題だ。
 5月に本紙が行った世論調査では、「関心のある政策」で「社会保障」が2位を大きく引き離してトップだった。有権者が不安を持っている裏返しであり、各党は責任ある将来像を示す必要がある。
 国民年金は将来的に、3割ほど給付水準が下がる見通しだ。政府は「支え手」を増やそうと、70歳まで働ける機会確保を企業の努力義務とし、年金の受給開始年齢を75歳まで広げるなどしてきた。
 低年金者を減らそうと、2階部分の厚生年金の対象拡大にも着手し、「勤労者皆保険」を掲げる。だが、それによって負担が増える事業主の理解を得るのはこれからだ。現役世代が「老後は安心できる」と言える状況では決してない。
 医療は、一定以上の収入がある75歳以上の医療費負担が10月から引き上げられる。ただ、現役世代の負担軽減効果は1人当たり年約700円にとどまり、健康保険財政の改善効果は限定的だ。高齢人口の増加で医療費が膨らむ構図は続く。
 介護は、サービス量の増加で保険料の上昇が続き、65歳以上が払う月額平均保険料は、2000年の制度開始時の2911円から現在は6千円超となっている。
 労働力不足も深刻だ。処遇改善措置はなされたが、「不十分」「現場に直接届いていない」との指摘がある。少子高齢化が顕著な地方では、サービス提供体制を整えられず、介護難民が出ている地域もある。
 これらの課題に対して、自民党は参院選公約で「全ての世代が安心できる持続可能な全世代型社会保障の構築へ、計画的に取り組みを進める」とうたう。少子化対策は「安定的な財源の確保」とするが、裏付けはない。この公約だけでは、何をどうするか分からないのが実情だ。
 野党の主張を見ると、給付の拡充策や負担の軽減策が目立つが、財源は曖昧なままだ。
 社会保障の議論は、痛みを伴う展開になりがちだ。前回の参院選前、「老後資金2千万円問題」で国民の年金不安が噴き出したこともあるためか、今回の参院選で、給付と負担の議論に政治が踏み込もうとする姿勢は見えづらい。
 逆に透けて見えるのが、その場しのぎで先送りする姿勢だ。与党が今春、受給額が減る年金生活者向けに5千円給付案を提案し、批判を受けて撤回した経過が象徴的だ。
 社会保障は中長期のビジョンを示した上で、合意形成を図る作業こそが重要になる。「負担」を語らない政治に信頼を置くことはできない。

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