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2022.07.01 05:00

【香港返還25年】警察国家化に膨らむ懸念

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 英国の植民地だった香港が、中国に返還されて25年たった。返還後50年は維持するとした「一国二制度」は折り返し地点を迎えるが、形骸化が進んで香港社会の変質は覆い隠せない。
 国際社会の懸念とは裏腹に、習近平指導部は中国本土との一体化を急ぎ、民主派市民や報道機関への締め付けを強化。警察国家化の気配も漂い、急速に「自由都市」の雰囲気を失いつつある。
 1997年の香港返還は、アヘン戦争や列強干渉の苦い歴史に終止符を打つ節目だった。だが、強権的な手法で香港市民が抑圧される現状をみれば、その歴史的な評価も変わってこよう。
 中国と香港の関係は、習氏が権力を握った2012年に転機を迎えたといってよい。香港政府と、政治的要求を強める民主派市民との対立が頻発するようになった。
 高度の自治を認めた一国二制度を骨抜きにしようとする動きが加速したからにほかならない。長年、自由を享受してきた香港市民の反発は当然といえる。
 香港返還を決めた中英共同宣言や憲法に相当する香港基本法は、50年間は資本主義を継続し、民主主義に関わる言論や集会の自由を保障した。しかし、習指導部はそうした原則の根幹をなす選挙制度や言論を標的にして統制を強化していく。
 14年には行政長官選挙で事実上、民主派の立候補を排除する制度改革を強行。抗議する若者らによる大規模デモ「雨傘運動」が起きた。21年には立法会(議会)からも民主派を締め出す制度変更を行い、普通選挙を求め続けてきた民主化運動は完全に抑え込まれる格好となった。
 選挙対策だけではない。20年に施行された香港国家安全維持法(国安法)は、香港社会の中国化に向けた決定打となりかねない状況だ。政権転覆や外国勢力の干渉などを処罰する内容で、反政府的な論調で知られる新聞を廃刊に追い込み、民主派市民の動きを封殺する手段として運用されている。
 習指導部が統制の動きを強めた背景には、中国経済の成長があろう。香港が持つ国際金融センター機能はこれまで大きな経済効果を生んできたが、中国全体の発展で相対的な地位は低下した。統制を強化しても問題はないと判断したのだろう。
 それだけに香港経済の先行きにも懸念が広がる。国安法に基づき中国政府が情報統制などを強めれば、経済・金融都市としての魅力は薄れ、衰退につながる恐れもある。
 ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、改めて台湾海峡問題が国際社会の耳目を集めている。「一国二制度」はもともと、台湾統一を想定した構想だったからだ。
 中国は「内政干渉」と反発するものの、香港の統制強化や新疆ウイグル自治区の人権問題など、自らの強権的な姿勢が疑念を招いたことを自覚する必要がある。中国政府は香港市民の声なき声、国際社会の懸念に耳を傾けるべきだ。

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