2022.06.28 08:00
地空 伝える熱意 安芸支局・宮内萌子
安芸市のJA全農の「ゆめファーム」。省力化と高収量との両立を目指す新たな栽培法を実証中のハウスで、場長の西村宙晃(ひろあき)さん(34)が丁寧に教えてくれた。ビニールで覆われた根の部分について質問をすれば、大胆にカッターで裂き、実物まで見せてくれながら。
実証は高度で専門的。でも、植物を人に例えた説明で、素人の私でも作業の意図や重要性がイメージできた。外国人技能実習生を含め18人の従業員を指導する西村さん。相手の目線に合わせ、分かってもらおうと努めていると伝わってくる。「従来のやり方を否定はしない。ただ、産地を守るため、もっと楽に、多収量にできるやり方を広げたい」。熱っぽく語る西村さんに期待と信頼を寄せ、協力する農家も増えてきた。
とはいえ、農業を取り巻く環境は厳しい。ある農家の男性は「収量も大事やけど、燃料や資材の生産コストは上がり続けるのに、販売単価は安いまま。根本的にどうにかせんと産地は沈む」と危ぶむ。「今の政治は混沌(こんとん)としちゅう。日本の農業はこの先どうなるのか…」
参院選公示から1週間。候補者の言葉に耳を傾けてみても、何をどう進めるのか、なぜそれが必要なのか、具体的にイメージできないことが多い。本当に成し遂げたい、分かってもらいたいという熱意があれば、伝え方は変わるはず。候補者にどれほどの熱量があるか、私たちの見極める力が試されている。