2022.06.24 08:00
【2022参院選 円安と物価高】家計負担をどう和らげる
生活防衛に日々、頭を悩まさざるを得ないが、「三重苦」による物価高は容易に落ち着きそうもない。どう家計の負担を和らげていくか。影響の裾野が広いだけに、その対応は参院選でも最大の関心事になっている。
4月の消費者物価指数は、前年同月比で2・1%上昇した。価格変動の激しい生鮮食品を除いた指数であり、生活実感としてはより大きな負担感があろう。国内企業の物価指数も5月は9・1%上昇しており、企業側がまだコストの増加分を価格へ十分に転嫁できていない状況がうかがえる。
世界的に物価上昇圧力が強まるなか、日本経済の特異さが欧米との金融政策の違いとなって浮き彫りになった。米欧が記録的なインフレの退治に向けて政策金利の引き上げにかじを切った一方、日銀は大規模な金融緩和策を堅持している。
需要が力強く回復する米欧とは異なり、日本の物価上昇はエネルギーや原材料の価格高騰が主な原因だ。物価の上昇とは裏腹に、消費意欲が高まっているとは言いがたい。日銀の黒田東彦総裁も、金融引き締めに転じた場合、景気の腰折れにつながる恐れを指摘する。
こうして米欧と日本の金利差拡大に伴って、運用に不利な円を売る動きは加速。為替相場は一時1ドル=136円台となるなど、およそ四半世紀ぶりの円安水準となった。
急激な円安は、輸入コストの増大となって家計や企業の負担をさらに膨らませる。だが、日銀は円安の悪影響と景気の腰折れ懸念の間で板挟みの状況に追い込まれ、打つ手がないのが実態だろう。
野党側はこの円安と物価高を「黒田円安、岸田インフレ」などと批判する。ただ、日銀が担う金融政策単独では限界がある。政治による効果的な経済対策が重要になる。
政府は4月、ガソリンなど燃油価格の抑制策や、低所得者の子育て世代への5万円給付を柱とする総額6兆2千億円の緊急対策を打ち出した。しかし、この「対症療法」は家計の痛みを取り払うには不十分と映ったに違いない。直近の世論調査では、政府の対策を「評価しない」との声が64・1%に上った。
国民の厳しい見方はそのまま、家計の実態と重なる。この四半世紀、日本の実質賃金は伸びを欠いたままだ。そうした状況での物価上昇が、消費意欲を鈍らせているのは明らかだ。
世界的に需要が回復するなか、なぜ日本だけが力強さを欠いているのか。各党各候補者は、この構造的な問題を正面から論ずる必要がある。